シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

2017アカデミー賞予想

昨年に続き、アカデミー賞を予想してみます。




今年は、昨年に比べると予想が比較的簡単でした。
その中で、争点となるのは、
アカデミー賞会員大半が住むハリウッド・ミュージカルを見事蘇らせた、過去最多タイノミネーション『ラ・ラ・ランド』の勢いか・・・
はたまた、昨年のホワイト一色の授賞結果や最近の排他的な情勢への反発がサプライズを引き起こすのか・・・


・作品賞
『ラ・ラ・ランド』

自信あり!
賞レース批評家系が主な前半は『ムーンライト』との一騎打ちも、ゴールデングローブ以降の組合関係の賞は、ほとんど独占しているため、間違いないでしょう!

・監督賞
デイミアン・チャゼル
(『ラ・ラ・ランド』)
年齢、「社会的な意義」の観点から『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスに流れる可能性もあるが、やはりこちらも『ラ・ラ・ランド』から。

・主演男優賞
ケイシー・アフレック
(『マンチェスター・バイ・シー』)
賞レースではケイシー・アフレックがずっと鉄板中の鉄板でしたが、ここにきてまさかの俳優組合賞をデンゼル・ワシントン(『Fences』)が受賞。
ここ数ヶ月の情勢への反発影響だと思いますが、アカデミー会員の在籍数も多い組合の為、かなり迷いました。しかし、最後はケイシーで。

・主演女優賞
エマ・ストーン
(『ラ・ラ・ランド』)
自信あり!
途中までは、イザベル・ユペール(『未来よ こんにちは』)とナタリー・ポートマン(『ジャッキー』)の2強でたまにエマ・ストーンでしたが、組合系の賞に以降してからはほぼエマ・ストーン。
俳優組合賞も取っているため、間違いないと思います。

・助演男優賞
マハーシャラ・アリ
(『ムーンライト』)
主要部門で一番固い。
対抗の名前が挙げられないぐらい、もはや獲らない理由がないです。

・助演女優賞
ヴィオラ・デイヴィス
(『Fences』)
こちらも自信あり。
賞レースの流れもそうですが、黒人女性で初めて3回目のノミネーションかつ評判も非常に良い為、間違いないのではないでしょうか。

・オリジナル脚本賞
『マンチェスター・バイ・シー』

影響度が高いと言われる米・脚本家組合賞は、アカデミー賞では脚色賞に流れた『ムーンライト』が受賞。
その為、ゴールデングローブで獲った『ラ・ラ・ランド』と、イギリスアカデミー賞で獲った『マンチェスター・バイ・シー』の二強で非常に難しいですが、脚本家ケネス・ロナーガンはノミネート歴があるので後者と予想。

・脚色賞
『ムーンライト』

自信あり。
作品賞、監督賞を撮れないとしたら、バランスを考えて、この賞は『ムーンライト』でしょう。
対抗は『メッセージ』。

・撮影賞
『ラ・ラ・ランド』

自信あり。

・編集賞
『ラ・ラ・ランド』

自信あり。

・オリジナル作曲賞
『ラ・ラ・ランド』

間違いない。

・オリジナル歌曲賞
city of stars『ラ・ラ・ランド』

自信あり。ただ、『ラ・ラ・ランド』は二曲入っている為、票が割れる心配が少し。

・長編アニメーション賞
『ズートピア』

アカデミー会員受けするテーマ+流石の完成度で、文句なし。
一方で日本舞台の『Kubo and the Two String』が台風の目。

・外国語映画賞
『セールスマン』
(イラン)
今年の賞レースを賑わせている作品が、ノミネート作品以外に多くなってしまっているこの部門。
特に超話題作のパクチャヌク『お嬢さん』がエントリーすらされていないのは、勿体無い...
そんな中で『ありがとう、トニ・エルドマン』が有力とされていますが、『セールスマン』が受賞と予想します。
イラン映画の巨匠監督ファルハディが、例のイスラム排除問題で授賞式の出席を断念。
この事が、結果に大きく影響するのではと考えます。



以上、14部門を予想!!
主演男優賞と外国語映画賞の二つが鬼門ですが、果たしていかに...



  1. 2017/02/27(月) 00:25:24|
  2. アカデミー賞
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75『サバイバル・ファミリー』教訓エンターテイメント!?

やっぱり家族って...

矢口監督最新作は教訓エンターテイメント映画!
『サバイバルファミリー』



~あらすじ~
鈴木家は、父・義之(小日向文世)、母・光恵(深津絵里)、息子の賢司(泉澤祐希)、娘の結衣(葵わかな)の4人家族。ある朝、目を覚ますと突然全ての電化製品が停止しており、鈴木家だけでなく近所中で同じことが起きていた。さらに電車も車もガスも水道も止まってしまい、家族全員途方に暮れる。そこで義之は、東京から出ようと決断し……。(シネマトゥデイ引用)






☆☆☆☆☆☆☆(75/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
ただのハートフルコメディじゃないから!!
という事は言っとかないとと思いまして...

『ウォーターボーイズ』や『WOOD JOB』、『スウィングガールズ』の矢口監督最新作。
中でも『WOOD JOB』は林業の現実を捉えながらコメディ色を強めた傑作でした。
そんな監督のフィルモグラフィーや、今作のポスターや予告から、コメディ色の強いライトな作品だと予想しがちですが、今作は決してそんな作品ではありません。
そのせいか、「思ってたのと違う!」という低評価が多い気が...
これまでの作品も、実はシビアなテーマが内包していたのですが、今作はよりシビアな面が前に出てくる見応えのある秀作です!

冒頭から、家族の描写がとにかく生々しく、苦笑いの連続です。
父・義之(小日向文世)、母・光恵(深津絵里)、息子の賢司(泉澤祐希)、娘の結衣(葵わかな)の都内に住む4人家族の日常。
描かれるのは普通の日常ですが、見ているこちらはこの作品の行く末を知っている為に、電気への依存が気になって仕方ありません。
ここでの、娘の両親への態度、思春期息子の両親との距離感、兄弟の会話、夫婦感の諦めた空気、全てがリアルで...とても苦い...
この生々しくも興味をそそる冒頭だけで、面白い映画の予感がプンプンです。

もし朝起きると、電気製品が全く使えなくなっていたら...
電気が通っていないだけでなく、車や携帯電話、時計など、バッテリーや電池を必要とする物が全てストップ。
そして驚くべき...というより考えた事がなかっただけですが、影響は電気を使って供給や生成している、ガスや水道といったその他のインフラにまで...
特にぞっとしたのが、情報を知る手段が皆無である事。
そんな改めて気がつく恐ろしさを、立て続けに痛感させられます。

当初は楽観視していた家族ですが、一週間、二週間と続くにつれて、食料も尽きかけ、東京脱出を決心します。
どこまで行けば電気があるのか...
という情報が皆無の中で、母の実家九州に向けた、サバイバル旅が始まります。
この情報が皆無というのが体感映画としての肝。
どうしてこの状態に...というのは、最後までわからなくても全然問題ない類の映画です。

ここからの都会っ子達が遭遇する教訓めいた悲劇や助け合い、インフレして行く過酷さががとにかく面白い。
現実はもっと過酷...というのは勿論そうなのですが、生々しさをあえて排除した中でも、ギリギリエンターテイメントのラインを保つ範囲で結構攻めてきます。

サバイバルに加えて、今作は家族再建こ物語でもあります。
特に小日向文世演じる父にピントが多く当たります。
普段は文句だけは一人前な父が「俺に任せろ!」なんて言ってはみるのですが、取る行動全て空回り。
最初はニヤニヤ出来るのですが、徐々に笑えなく...もうやめてあげて...
いざとなったら頼れる息子と娘、更にはハイスペックファミリーの登場で、目も当てられません...
そんな父が!!
吹っ切れた結果、避難の為ではなく、家族の為に行動を始め、更にはその変化故の「悲劇」が家族を一つにしていくのだから、涙なしでは見られません!
最終的には人類史が何故家族を形成したのかという、根元まで突いてくるのだから恐れ入ります。
現代社会では、そら家族は疎遠になるわなと...

一方で、エンターテイメントとしての枠組みを守るがあまり、事態が進行するに連れて、だんだん説得力が欠いてきます。
現実はもっと過酷というのは仕方ない。
しかし、「彼らが着くと事態が動き出す」「死人が出ない」というのは、脚本と演出で何とかできたのではと、非常に勿体無い...

しかし、教訓エンターテイメントとして、大満足の映画です。
是非劇場で体感していただきたい!

しかし、自転車って大事だな...







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  1. 2017/02/23(木) 00:26:51|
  2. 2017年公開映画
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65『マグニフィセント・セブン』人助けにルーツとか関係ねぇ

死に場所を探す男達の物語。

アントワーン・フークア監督最新作はあの西部劇!?
『マグニフィセント・セブン』



~あやすじ~
悪漢バーソロミュー・ボーグ(ピーター・サースガード)によって牛耳られ、絶望を感じながら生きているローズ・クリークの町の人々。住民の一人であるエマ・カレン(ヘイリー・ベネット)は、賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)、ギャンブラーのジョシュ(クリス・プラット)、流れ者、拳銃の達人といった7人の男を雇って、バーソロミューの手から町を救い出すように頼む。金のためと割り切って戦いに身を投じるサムやジョシュだったが……。
(シネマトゥデイ引用)





☆☆☆☆☆☆(65/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
1960年の西部劇で、言わずと知れた超名作『荒野の七人』の現代解釈のリブート。
更にルーツをたどれば、1954年の黒澤明監督の『七人の侍』が燦々と輝いているのだから、当時の日本映画が世界に与えた影響の大きさに恐れ入ります...
この二作は、数多くの引用、オマージュされているだけでなく、チームを形成する映画の在り方を確立した、映画史には欠かせない二作です。
この映画がなければ、スターウォーズもMIシリーズもアベンジャーズも、そして仮面ライダーシリーズすら無かったかもしれない...

そんな名作を60年ぶりに蘇らせる強者
それが、一風変わったカッコ良い男を撮らせると右に出る者はいない、信頼できる男!
『トレーニング・デイ』や『イコライザー』のアントワーン・フークア監督。
七人のマグニフィセントな??男達を、デンゼル・ワシントンやクリス・プラット、イーサン・ホーク、イ・ビョンホン等、豪華でスクリーン映えする俳優陣が演じます。

舞台は、労働者達が長年の努力で成り立たせてきた村。
そこへ、ピーター・サースガード演じる資本経済の成り上がりバーソロミュー・ボーグがやってきます。
資本主義の非人道性を体現する彼の軍団が、「力」を誇示するのですが、それがもう酷くて、ついには人道性の象徴である教会を燃やし、実効支配を強めていきます。
反抗した事により夫を失ったヘイリー・ベネット演じる未亡人エマ・カレン。
(正統派な美人じゃないが、今作でも独特の色気がたまらない...)
彼女は、彼らを追い返してくれる猛者を探しに、村を発ちます。


プロットは王道中の王道。
しかし、フークア監督だけあって、集まってく男共がやはりそれぞれが魅力的。
そんな男共をずらっと見渡すと、この映画から切り離せない物が浮き上がってきます。

白人に黒人、アイリッシュ系にヒスパニック、メキシコからの移民にインディアン。
人種、種族の多様さ!
こんな構成、オマージュ元の西部劇の時代ではありえませんでした。
かのリーダーを思わせる悪役含め、まさに今の内向きな情勢へのカウンターパンチを、伝統芸の西部劇でやってしまっています。


一人ずつでもご飯が進むほど、個性豊かな面々ですが、人種や種族の多様性故にそれぞれの背景もやはり異なります。
白人黒人ももちろん、インディアンとメキシコ系の移民との関係性は、テーマとして全面には出てこないものの、常に含みをもたらせます。
しかし、そんな彼らが...
どんな種族、人種に関わらず、それだけは間違いなく崇高であるべき人助けの為に、生死問わずにチームとなり戦う展開に、もう上がらずにはいられません。

現代的なテーマが詰め込まれてはいますが、それでもルックは「西部劇」。
当然リアルタイムで全盛を知らない自分にも、西部劇の醍醐味、楽しさがわかった気になります。
エンディングで流れる曲とか、もうその時点で100点出ちゃいますよね。

また、豪華な面々の中で、特に際立っているのが射撃の名手グッドナイト(イーサン・ホーク)とナイフの達人ビリー(イ・ビョンホン)。
彼らの補完関係が最高でした。
とくにイーサン・ホークは、役割的にも美味しいところなのは間違いないが、やはり異色な存在感があります。
グッドナイトの抱える闇、ビリーの存在、そして二人の運命は、ローグ・ワンのチアルートとベイズの関係を彷彿させ、今作で最も感情が入っていきました。


しかーし、全体的にそうですが、特に中盤は単調で退屈。
『荒野の七人』から比べると、ドラマパートが物語を進めるだけのものに終始してしまっているため、グッドナイト以外の面々には、ほとんど感情が入りきらない。
そもそも、どうしてそこまで命を懸けて戦う決意をするに至ったか...の部分が、大半のキャラクターには見えてきませんでした。
その為、上がるはずのラストも、正直ピンと来ず...
勿体無い。




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  1. 2017/02/12(日) 14:05:39|
  2. 2017年公開映画
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95『ラ・ラ・ランド』至極の126分(試写雑感)

映画って本当いいもんだな~

アカデミー賞最有力!
新進気鋭の天才デイミアン・チャゼル監督最新作は、大人で優雅な大傑作!!
『ラ・ラ・ランド』




~あらすじ~
何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。
(シネマトゥデイ引用)




↓ひとまず、ストーリーに触れないよう雑感を。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆(95/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)

見終えて1日経過しましたが、高揚感がおさまりません。
果たして、私の語彙力でこの映画の魅力を伝えきれるのだろうか...
とにかく全人類とこの豊かな気持ちを共有したい...

監督は、今最も映画人からの嫉妬を買っている人物、デイミアン・チャゼル。
ジャズによるボクシング映画であった前作の『セッション』がとにかく面白い上、凄い。
特にラスト15分の映画史に残る衝撃を与え、結果アカデミー賞5部門ノミネート、3部門受賞の快挙を成し遂げました。
が、それ以上の衝撃はなんとその作品は、彼にとって監督1作目、その上当時若干30歳。
ハードルが上がりきった上での2作目になったのですが、蓋をあけてみれば、ガッカリしない所か賞レース最大の注目作に。
ジャズドラム奏者だった経歴もあり、1作目後は鬼才なんて言われてましたが、これは本物の天才ですね。

この映画はトレーラーやポスターから最高でした。
わずか2分半の中だけで、何処となく伝わってしまう多幸感ですが、実際の映画、特に前半部はその期待を大きく上回ってきます。
冒頭の多様性讃歌のミュージカルシーンから虜に。
もう傑作を確信。
出会いへ続く音楽&ダンスの連続に、自ずと前のめりになり、これから始まるだろうロマンチックな物語に、ワクワクが止まりません。

そして色彩豊かな画作りもロマンチック。
カラフルな衣装や情緒的な夕日、どこを切り取っても、ポストカードに出来そうな具合です。
この豊かなスクリーンを見ていると、その時代は当然知らないのですが、カラフルでビビットこそが映画の最大の魅力になった時代、「総天然色」50~60年代ミュージカル映画の楽しさが映画館に蘇ります。

少し勝気な女優志望ミアと、捻くれジャズピアニストセバスチャン。
演じるエマ・ストーンとライアン・ゴズリングがキレッキレにチャーミング。
あぁ愛おしい。
二人は最悪な出会いから近づいていくが...という王道の話なんですが、そこの高揚感は前述の通り。
一方で、決して一辺倒なロマンチック恋愛映画ではなく、共に「夢追い人」である事の方が前に来る、現代的な物語が展開されていきます。
ロマンチックな音楽と映像と、チャーミングな二人は勿論魅力的ですが、
実はこの映画で突出して凄いのは、それらを手段として活用しきる脚本。
前半の煽るミュージカルから、音楽映画へと転換した後に、再びミュージカルに帰還していく計算された作りは、物語のトーンとリンクしてます。
また場面を対比させる音楽の使い方は本当に見事で、感情を激しく揺さぶられます。
それぞれの曲の対比のさせ方についても語りたいが、語り始めるといキリがない為自粛。。。
更に極めつけは、それらを三たびフル活用したラスト15分の畳み方が秀逸で、感情が二転三転。
この「おとぎ話のような、おとぎ話ではない、おとぎ話」に、見終えた後の感情の複雑さに言葉を失いました。
愛おしい。愛おしい。愛おしい。

冒頭の多様性だとか、夢への讃歌だとか、真っ当な主張もまた愛おしい。

これほどまで心を豊かにさせてくれる映画をまだ見ていない人が心底羨ましい。。。
見終えた後のサントラもまた最高だ!!!




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  1. 2017/02/03(金) 00:08:09|
  2. 2017年公開映画
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80『ドクター・ストレンジ』絶対性を覆せ

こんなの見た事ない!

MCU最新作。
食傷気味なシリーズに新たな次元を注入!?
『ドクター・ストレンジ』



~あらすじ~
ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、天賦の才能を持つ脳外科医として名をはせていたが、ごう慢さが玉にきずだった。彼は地位も名誉もリッチな生活も手に入れていたが、交通事故によって全てをなくしてしまう。神の手と崇拝された両手の機能を取り戻すため、高額な治療を繰り返すが……。
(シネマトゥデイ引用)




☆☆☆☆☆☆☆☆(85/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
単体ヒーローとしても超大作となる映画同士が、クロスオーバーして世界観を共有するMCU(マーベル・シネマ・ユニバース)。
前作『シビル・ウォー/キャブテン・アメリカ』でひとまず区切りとなったフェーズ2。
仲間同士の内乱となり、これまでの経緯と主張がクロスする対立軸と、見事なまでに動的に映されるオールスターアクションシーンが最高だったのですが、正直背景が複雑すぎてクロスオーバーはもういいかな...と食傷気味でした。
そんな中で発表された単体ヒーロー作となる今作。
フェーズ3のスタートとなる訳ですが、次元を超えたスケールで展開する新感覚の王道映画になってます!!

監督は『フッテージ』や『地球が静止する日』のスコットデリクソン。
ホラーのイメージが強い監督ですが、ドクター・ストレンジに対する思い入れは並々ならぬ物があるようで、500万円の自腹を切って自らを売り込んだ模様。
マーベル側も監督人選には先見の明があるので、何か資質を見出したのでしょう。
主演は、今や変わり者を演じさせるの右に出る者はいないベネディクト・カンバーバッチ。
脇を、ティルダ・スウィントンやレイチェル・マクアダムス、マッツ・ミケルセンらが固めます。


今作の主人公は、滅法腕が良い脳外科医。
『アイアンマン』のスターク社長がひねくれ者な天才なら、ストレンジは傲慢な天才
順調に名声と傲慢さを伸ばしていたところ、大事故に巻き込まれてしまいます。
この事故シーンの重厚表現がまー凄い。
事故が原因で、彼の両手は医者として全く使い物にならなくなってしまいます。
それでも、担当医に「俺なら治せた。お前のせいだ!」なんて言ってしまう傲慢さは健在。
そんな傲慢な役を演じるのがカンバーバッチなんだから、もう見た目通りで、違和感0。


全ては医者としての腕だけでのし上がってきたストレンジ。
失えば、すべてを否定されたも同然です。
そんな彼が藁をも掴む思いで頼った、カマー・タージという謎の組織で、ティルダ・スウィントン演じるエイジェント・ワンに出会います。
別の次元が存在!?
その次元から魔術を引き出す!?

なんて話をされますが、彼は対極の存在である医者。
当然、信じれるはずも有りません。
しかし、魔術の世界が彼を覆っていき....
方向性と距離感を伸縮、湾曲させる空間。
『インセプション』以上に見た事がない映像が、画面に広がります。
トリップしたような抽象的な空間すら襲ってくる中で、もう笑うしかありません。

方向、距離、重力、時間...
これらは絶対性のあった認識や価値観。
魔術とは対極の存在であった彼の絶対性を、180度ひっくり返すには、充分過ぎる光景。
そんな絶対性がひっくり返される体感を、そのまんま追体験。
映像表現がストーリーに直結している所が、この映画の最大にして至極の魅力だと感じます。


傲慢な天才。
そればかり目につくストレンジですが、成功を掴んでいるのは臆病さ故。
傲慢さを取り払えれば、自らの後継者となる才能があると見たエイジェント・ワンは彼を弟子にするのですが、
同じくくかつての弟子であったマッツ・ミケルセン演じるカエキリウス率いる組織の脅威が忍び寄り...


作品のトーンは、DC作品のような重たさは決してなく、マーベル作品の中でも上位に来るほど、ライトになっています。
適度にオフビートであるマーベル独特の軽さとカンバーバッチの存在感との相性は抜群。
スクリーン映えする彼の表情やたたずまいが、より一段の面白味を生み出しています。
マントとの絡みや、その時のカンバーバッチの顔力なんか最高でした。

そして極めつけはクライマックスのアクション。
詳しくはここには書きませんが、とにかく必見です。
それまでのアクションも「こんなの見た事ない!」なんて思っていましたが、クライマックスには「こっちの方が全然見た事ない!!!」となっていました。

宿敵カエキリウス、そして新たな敵の存在の描き方も面白い所。
エイジェント・ワンの「身からでた錆」なのですが、それぞれが対極の錆になっています。
しかし、この映画の唯一の欠点もここ。
エイジェント・ワンを描ききれずに終わってしまった為、悪役のバックグラウンドの深みを一気に無くしてしまっていました。


されど!!
私は近年のアメコミ作の中では、一番好きかもしれない。
ガーディアンズ・ギャラクシーとマイティ・ソーの続編も続いていく...
今年もマーベル攻勢の年だな~



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  1. 2017/02/01(水) 16:28:25|
  2. 2017年公開映画
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