『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
~あらすじ~スパイダーマンの正体がピーター・パーカー(トム・ホランド)だという記憶を世界から消すため、ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)はある呪文を唱えるが、それがドック・オク(アルフレッド・モリナ)らヴィランたちを呼び寄せてしまう。ヴィランの攻撃によって、ピーターのみならず恋人のMJ(ゼンデイヤ)らピーターの大切な人たちにも危険が及ぶ。(シネマトゥデイ引用)
8/10★★★★★☆☆☆以下 レビュー(ネタバレなしです!!)【作品背景】『アベンジャーズ』シリーズなどマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の27作目になる本作。
MCUの中で、トム・ホランド演じるスパイダーマンがメインとなる作品、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)に次ぐ、いわゆる「ホーム」シリーズの3作目で、その「ホーム」シリーズとしては区切りとなるのが本作と言われています。
また、過去にスパイダーマンの映画シリーズはその「ホーム」シリーズ以外で、2002年から始まったサム・ライミ監督×トビー・マグワイア主演の三作品、2012年から始まったマーク・ウェブ監督×アンドリュー・ガーフィールド主演の2シリーズあります。
そんな中で本作は、トム・ホランド版の三作目でありながら、マルチバース...いわゆるパラレルワールドの導入により、過去の2シリーズに出てきたヴィランが、同一俳優、同一キャラクターのまま、登場しトム・ホランドのスパイダーマンと対峙する事が予告編から判明し、めちゃくちゃ話題になっていました。
つまり
過去の2つのシリーズと何かしら繋がりのある作品になりつつも、トム・ホランド版「ホーム」シリーズの締めくくりであり、MCUの世界観に「マルチバース=多元宇宙、多元時間軸」という大きな流れが入ってくるターニングポイントになる、非常に着目点の多い作品になっています。ここからの感想は、
前半は「完全にネタバレなし」
後半は「意図的に隠されてるネタバレは避けつつ、物語展開だけ少し触れる」
形で話していきます。
【感想(ネタバレなし)】まずは感想を、ネタバレに触れる事なく話していきます。一言で感想を言うと...
展開の強引さはめちゃくちゃ感じつつも、それ以上のお祭り的魅力と、作品自体の「心意気」の魅力が、大きく上回り、「この映画に立ち会えて良かった」と感じる奇跡の作品になっていました。過去にもシリーズ作品として仕切り直し、リブートされ、複数存在するシリーズはたくさんあります。
ただ殆どの作品は、シリーズ間で余りに時間が経ち過ぎていて、過去シリーズをそのまま活かす事は現実的ではない中、スパイダーマンシリーズは20年の間に3つのシリーズがあって、それがMCUのマルチバースの流れとも合致するからこそなし得た企画で、過去作のヴィランと過去作の流れをそのまま「今」向かい合う映画になっていて、その
「お祭り」にリアルタイムで立ち会えた事による高揚が終始ある映画になっています。
ただヴィランを出すだけではなくて、そのヴィランとの向かい合い方、心意気の部分が凄く良いんでくが、それは後半に触れたいと思います。
さらに本作は過去シリーズを拾うだけではなくて、MCU版スパイダーマンとして、「ホーム」三部作の終着点として、ピーター・パーカーに訪れる展開も、めちゃくちゃ重たいんですけど、三部作としての意味を成してて好きでした。
つまり、これまでの「ホーム」シリーズは過去シリーズと違って学園物がベースにある中でのヒーローという事で、一作目では青春の一部としてのヒーロー活動、二作目では青春とヒーローの折り合いを描いており、「子供である」事をベースに描かれていたんですが、本作は「真のヒーロー」もっと言うと
真の「親愛なる隣人」となる集大成的展開になっていて、それがめちゃくちゃ重いし、俺たちの知ってる「スパイダーマン」になったと感じられる作品なっていきます。
そんな風に、
過去作のヴィランをリアルタイムに繋げるお祭り的展開と、「ホーム」三部作としての集大成的展開を、同一ストーリー上に成り立たせた、奇跡の一作になっていました。
【感想(核心以外のネタバレ含む)】ここからは、核心以外の展開にだけ触れて、感想を話していきます。まず本作のヴィランとの向き合い方、「心意気」の部分が凄く良かったです。
振り返ってみると過去のスパイダーマンのヴィランは、根っからの悪人ではなく、皆悲しい展開故にヴィランになっちゃってるんですが、本作はそんなヴィランと、過去シリーズ同様に戦うのではなく、どうやって「救う」かという話になっていきます。
そんな
救えなかったヴィランを救う展開は、ヴィラン自体への優しい視点も感じつつ、彼らを救えなかった過去シリーズのスパイダーマンまでも救おうとする、めちゃくちゃ優しい視点を感じる事が出来ます。一方で、本作スパイダーマンにとっても、その「救う」展開は大きな意味を持っていきます。
『大いなる力には、大いなる責任が伴う』という言葉が、本来は自分の責任外の所に感しても、力を持った者の責任として、身を挺しても背負っていかないといけないというのが、別世界のヴィランへの向き合い方を通して成長として描かれ、最終的には「親愛なる隣人」としての大いなる覚悟として繋がっていくのが、うまいなと思いました。
ただ、そういった「意気込み」をしっかり感じられる一方で、ストーリー展開の部分でどうしてもノイズになってしまった所が何箇所かありました。
きっかけとなる大きな問題がいつの間にかストーリーから消えるのはモヤモヤが残りますし、一部ヴィランのストーリー上都合の良い立場に流される感じはノイズになりました。
ラストの展開もロジック的に腑に落ちない所もあったり、かなり強引に物語を進めてるのは、否定できないのかなと思います。
ただ、お祭り要素が遥かに凌駕して、テンションを上げてくれるので、「ありがとうございます!」の一言に尽きる、そんな映画になってるのかなと思います。
オススメです!!
出来れば、過去のスパイダーマンのストーリー、特にヴィランの顛末を要約レベルでも良いので振り返ってから、見る事をおすすめします。
- 2022/01/14(金) 13:17:40|
- 2021年公開映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
『ラストナイト・イン・ソーホー』
~あらすじ~ファッションデザイナー志望のエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学するが、寮生活に向かず一人暮らしをすることに。新しいアパートで暮らし始めた彼女は、1960年代のソーホーにいる夢を見る。エロイーズは夢の中で、歌手を夢見るサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)と出会い、肉体的にも感覚的にも彼女と次第にシンクロしていく。
(シネマトゥデイ引用)
8/10★★★★★☆☆☆以下 レビュー(ネタバレなしです!!)【作品背景】12月10日に劇場公開。
何と言っても、エドガー・ライト監督の最新作という事で、映画好きとしては欠かせない一本。
エドガー・ライト監督といえば、元々は映画愛の詰まったコメディ畑で非常に評価されていた監督で、その頃の代表作といえば...
ゾンビ×パロディ×コメディ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』
ポリスアクションコメディの大傑作『ホット・ファズ!』
酔っ払いが世界を救う『ワールズ・エンド』
どれも内輪の悪ノリを発展させたB級とは言え、その枠で語るには勿体ない傑作。
その頃からある監督の特徴としては、
オマージュやあるあるへの逆張りなど映画愛に満ちた昨日である事、
そしてキレキレの編集センス。映画自体が一つの音楽のように食い気味でリズムを刻んで展開していく作家性があって、それが大好きな監督です。
そんな監督が、諸々の良さは残しつつ悪ノリは抑え、エンタメ映画のルックとして一気にグレードアップさせたのが、前作『ベイビー・ドライバー』。
監督と特徴である音楽的な映画のリズムと、実際に映画の中で流れる音楽とが、完全にシームレスになる事によって、めちゃくちゃ楽しい見た事ない映画に仕上げていて、映画監督として堂々たる地位を明確にしました。
そんな監督が撮る、新感覚ホラーという事で、観ないわけにはいかないでしょう!と楽しみに見てきました。
【感想(ネタバレなし)】一言で言うと、ジャンル的な枠に捉われない面白さがあって、めちゃくちゃ楽しかったです。
本作、ホラーであり、タイムリープ的なSFであり、夢追い人の青春映画であり、サスペンスでもある、ジャンル要素がかなり複合的に混ざった映画なんですが、それぞれの単体要素で見ると弱い、もしくは欠点もある映画なんですよね。
例えば、
「ホラー」として見た時には、新しい怖さを見せてくれる映画ではない、
「タイムリープSF」として見た時は、ロジック的な面白味があるわけではない、
「青春映画」として見た時は、掘り下げが弱く感じるし、
「サスペンス」として見た時は、かなり強引に見える。
なんですけども、めちゃくちゃ面白い。
何故かというと、ジャンル要素の面白さを見せる映画ではなく、ジャンルを横断する事を利用した別軸の面白味を表現している映画になっています。
最も特徴的なのが、観る立場と観られる立場がシームレスに移り変わっていく所による、映像的な豊かさと、ストーリー的な面白さにあるのかなと思います。
例えば、主人公のエロイーズが、憧れの60年代の夢追い人サンディを夢の中で追体験していく中で、その追体験の映像表現がめちゃくちゃ良い。
エロイーズはサンディを見守る立場なんだけど、歌手として女として観られる立場としてのサンディ自身でもある。
つまり、夢の中では何も干渉出来ない、だけど体験はできる立場で、こういった描き方が、前半は優美で楽しいし、中盤以降はホラー的に活かされていくのが素晴らしいし、終盤はさらにその枠をはみ出て、身をもって見られる立場化していくって展開のさせ方も、めちゃくちゃ面白いしよく出来てるな感じました。
また、本作60年代の超華やかなショービジネスを舞台にしているのですが、その光と闇の描き方、つまりはショービジネスを外から観る鮮やかさと、観られる側であり搾取される側の怖さ、その批評的な視点も本作の描かれ方で表現されていて、よく出来ています。
そんな観る観られる関係がシームレスに変わる面白さに加え、映画自体が一本の音楽のようにコーディネートされている、エドガー・ライト監督の圧倒的な映像編集センスによって、監督の手の上で本能的に掴まれて転がされます。
また、音楽の良さも最高で、ミュージカルではないストーリーとしての音楽なんですが、物語や映画全体のリズムに直結していて、めちゃくちゃ良かった。
映像も鮮やかで綺麗なんですよね。
本作キーとなるエロイーズの部屋の、外からの光を取り込んだ色が、作品全体の雰囲気を作ってて最高ですし、ソーホーの60年代のネオン煌びやかな街並みと、今のソーホーの街並みの比較も、最高でした。
二人の女優、エロイーズを演じるトーマシン・マッケンジーと、サンディを演じるアニャ・テイラー=ジョイの画面映えする存在感も良かったです。
強いて言えばアニャ・テイラー=ジョイは、もう少し見せ場があっても良かった、勿体ないなとは感じました。
色鮮やかで、ジャンルを横断した面白さに満ちた作品、是非劇場で見て頂きたいです。
オススメです!
- 2021/12/22(水) 18:00:12|
- 2021年公開映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
~あらすじ~1920年代のアメリカ・モンタナ州。周囲の人々に畏怖されている大牧場主のフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)は、夫を亡くしたローズ(キルステン・ダンスト)とその息子ピーター(コディ・スミット=マクフィー)と出会う。ローズに心を奪われるフィルだったが、弟のジョージ(ジェシー・プレモンス)が彼女と心を通わせるようになって結婚してしまう。二人の結婚に納得できないフィルは弟夫婦に対して残忍な仕打ちを執拗(しつよう)に続けるが、ある事件を機に彼の胸中に変化が訪れる。
(シネマトゥデイ引用)
7/10★★★★★☆☆以下 レビュー(ネタバレなしです!!)【作品背景】Netflixオリジナル映画、12月1日より配信が始まった作品ですが、一部劇場でも限定公開されています。
この作品、netflixオリジナル映画の中でもかなり早い段階から注目されていた作品になります。
というのも、ヴェネツィア国際映画祭で監督賞を受賞したり、トロント国際映画祭で最高賞である観客賞において次点に選ばれたり、来年のアカデミー賞においてnetflixオリジナル映画の中では最も作品賞に違いと言われています。
ただ、実際はそのトロントで最高賞を受賞した『ベルファスト』って映画が大本命なんですが、その作品に次ぐぐらいの期待値を持たれてる作品でもあります。
監督を勤めるのは、『ピアノ・レッスン』で脚本賞を受賞した、ニュージーランド出身の女性監督ジェーン・カンピオンさん。
本作で、アカデミー監督賞は取るんじゃないかなんて言われています。
主演を演じるのは、『ドクター・ストレンジ』や『イミテーション・ゲーム』のベネディクト・カンバーバッチ。
個性的な佇まいと演技力、両方を併せ持つ素晴らしい俳優で、彼もアカデミー賞の主演男優賞の有力候補だと言われています。
そんな本作、ベネディクト・カンバーバッチ演じる大牧場主のフィルが、同居する弟の再婚相手やその連れ子に冷たく残忍に接するんだけど、次第に彼の内面やバックグラウンドが露わになっていく...というストーリーになっています。
【感想(ネタバレなし)】大胆で、繊細な、流石オスカー有力作という作品になってました。
まず、大胆な所。
本作、この映画はどういうジャンルの映画で、どこに主観があるのか...を問われると、めちゃくちゃ難しい作りになっています。
序盤、田舎町でレストラン兼宿泊所を営む女性と、彼女にアタックする大牧場主フィルの弟の視点をベースに、フィルによる無茶苦茶な仕打ちを受ける立場の視点がベースになっていて、印象としてはホラーのような印象を受けます。
それが次第に、フィル側の視点にいつの間にかシフトしていて、彼のバックグラウンドに触れる映画になっていく。
で、そういう映画だという風に観ていると...「ある人物」に視点が移り変わっていき...クライマックスではこの映画全体が別の映画に見えるような仕掛けがされてる。
その中でうまいなと思ったのが、ジャンルが変わる事を別に強調してる訳ではなくて、そういう手法を取ることによって、気づけるような一貫したテーマ、つまりは「罪、そして絶対的な断罪」というテーマが、浮かび上がってくるようになっています。
その中で凄く繊細に扱われているのが、大牧場主フィルの捉え方、描き方です。
彼を描くのに、決してダイレクトにバックグラウンドを語るなんて野暮な事はせずに、彼の発する言葉の積み重ねや、「誰にどう接しているか」という所から、観客が結びつける事でバックグラウンドや心情変化が浮かび上がる描き方をしてて、非常に映画的に描かれていきます。
なので、しっかり集中して映画と向き合って観ないと、ジャンルや視点が変わる中で入り切れるかや、フィルの心情やバックグラウンドを解釈出来るかって所に、ついていけない可能性は高いのかなと思います。
実は私自身は2回観てて、1回目は序盤の女性と弟の視点をひきづったまま見ていて、段々女性と弟のアクションが語られないまま話が転換していく為、それに強引さを感じてしまい乗れなかったんですが...
2回目は、しっかりフィルの視点に入り込めて、彼の内面を理解するという所に楽しみを見つけられたかなと思います。
かなり観る人を選ぶ映画なのかなと思いますが、間違いなく上質な映画であり、来年のアカデミー賞の主役になり得る作品ですので、是非観てほしいなと思います。
オススメです!
- 2021/12/10(金) 12:44:57|
- 2021年公開映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
『ヴェノム :レット・ゼア・ビー・カーネージ』
~あらすじ~地球外生命体のシンビオートは、ジャーナリストのエディ(トム・ハーディ)に寄生したものの、食欲を制限されてストレスを溜め込んでいた。そんな折、未解決事件を追うエディは、刑務所に収監中の死刑囚クレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)と再会する。猟奇殺人を繰り返し、死刑執行が迫るクレタスは突然エディの腕にかみつき、彼の血液が普通の人間とは違うことに気づく。(シネマトゥデイ引用)
7/10★★★★★☆☆以下 レビュー(ネタバレなしです!!)【作品背景】最も有名なダークヒーロー「ヴェノム 」。2018年に単独映画として公開され、本作は第二弾の作品になります。
ヴェノムは、シンビオート=地球外生命体が人間に寄生する事で誕生するキャラクターで、原作からスパイダーマンの宿敵に当たるキャラクターであり、映画には2007年のサム・ライミ版『スパイダーマン3』 に登場していました。
つまり元々はスパイダーマン同様にMARVEコミックのキャラクターなんですが、映像化の権利はSONYが持っている為、基本的にはMCUとは世界観を分ける作品になっていて、前作を観ていれば基本的には楽しめる作品になってます。
2018年に公開された前作は、ビジュアル的にはダークな世界感の中で、寄生された主人公と寄生したヴェノムのドタバタ感が一種コメディのように浮かび上がる、寄生体とのバディ映画の体をなしてて、ハリウッド版ど根性ガエルと讃えらました。
批評家からの評価はイマイチだったんですが、興行的には大成功で、すぐに本作が作られた形になります。
そんな本作の監督を務めるのが、アンディ・サーキス監督。
猿の惑星の猿を演じるなどハリウッドNO1のモーション・キャプチャー俳優で、netflixによるジャングル・ブックの実写版『モーグリ』の監督を勤めるなど、モーション・キャプチャーのスキルを活かして監督にも挑戦しています。
また、主人公エディ・ブラックと、ヴェノム、一人二役を演じるのが、『マッド・マックス 怒りのデスロード』のトム・ハーディ。
モーション・キャプチャーの名手が、一人二役で体現する人間とクリーチャーの同化をどう表現するのか、楽しみな作品でもあります。
【感想(ネタバレなし)】潔く、前作の良い所のブラッシュアップに特化した、面白いジェットコースタームービーになっていました。
どういった所がブラッシュアップされているか...
一つは、エディとヴェノムの掛け合い、いちゃいちゃ。
前作は「付き合う前の一悶着...からのより愛を確信して付き合う」って掛け合いだったのに対し、本作は「交際後のイチャイチャ、大喧嘩による修羅場、そして仲直り」を描いていて、より相手の懐に入り込んでいるからこその、掛け合いが見られるのかなと思います。
その掛け合いが、前作以上にコメディに振り切ってるってのも良いですし、何よりそこに乗っかる同化描写、つまりはシームレスにエディとヴェノムが一つの体の中で入れ替わりながら喧嘩する描写が、大きく進化してて良かったです。
また、アクションを前作より更に進化しています。
ヴェノム 特有のグニョグニョ、ヌルヌルアクションが素晴らしくて、「ヴェノム 」と敵対する「カーネージ」のアクションの描き分けも出来てて、良かったなと思います。
そんなブラッシュアップ要素に対して、本作乗っかってくるのが、本作のヴィランでウディ・ハレルソン演じるカーネイジの存在なのかなと思います。
彼の人物造形がかなり良くて、ウディ・ハレルソンの元来持つ顔力に加え、バックグラウンドとして共感できる要素を入れつつも、キャラクターとしては全く共感できないシリアスキラーとしての描き、そんな共感要素はバッサリ切り捨てる距離感も好き。
そんなカーネイジのバックグラウンドを見せながら人物造形をしつつ、ヴェノム側のブラッシュアップ部分を見せる、それを最短経路のストーリーで進みながら、終始非常に早いテンポで最後まで走り切ります。
上映時間98分の、これぞジェットコースタームービー!という映画になっていて、その割り切りが清々しいなという映画になっています。
ただ個人的には、トーンダウンしていく自分もいて、物語を悪転したり好転したりする推進要素が一作目と変わらない上、そこをハイテンポで誤魔化して進んでいる所があって、ギアを上げた状態が段々煩くなってきたなと感じてしまいました。
とはいえ、一作目にあった良さを最大化して、全速で駆け抜けていく、楽しいジェットコースタームービーになっているのかなと思います。
オススメです!
- 2021/12/07(火) 14:22:49|
- 2021年公開映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
『tick, tick...BOOM! :チック、チック...ブーン!』
~あらすじ~1990年、アメリカ・ニューヨーク。30歳を目前にしたジョナサン(アンドリュー・ガーフィールド)はダイナーでウェイターとして働きながら、ミュージカル作曲家になることを夢見ていた。ロックミュージカルの楽曲に何年も取り組んできたが、恋人のスーザン(アレクサンドラ・シップ)は新たな夢のためにニューヨークを離れることを願い、ほかの仲間たちも夢を諦めようとしていた。(シネマトゥデイ引用)
9/10★★★★★☆☆☆☆以下 レビュー(ネタバレなしです!!) 【作品背景】今尚、世界中で上映され、映画化もされた名作ミュージカル『RENT/レント』。
その生みの親で、『RENT』公開前夜に35歳で悲劇の死をとげた天才ミュージカル作家ジョナサン・ラーソンが、自伝ミュージカルとして30歳で公開したミュージカル『tick, tick...BOOM! 』の映画化作品になります。
本作で監督を手掛けるのが、
ジョナサン・ラーソンが現代で生きていたら...を地で行くような、『イン・ザ・ハイツ 』『ハミルトン』の天才ミュージカル作家のリン=マニュエル・ミランダ。
天才ミュージカル作家の長編映画監督デビューという事に加えて、彼自身ジョナサン・ラーソンがきっかけでミュージカル作家を目指し、大きく影響を受けていたり、『tick, tick...BOOM! 』の再演でジョナサン・ラーソンを演じたりするなど、かなり繋がりの強い人物で、この背景にも注目です。
ジョナサン・ラーソンを演じるのが、『アメージング・スパイダーマン』や『ハクソー・リッジ』のアンドリュー・ガーフィールド。
舞台出身でトニー賞を受賞するなど評価されてきた彼が、ミュージカル映画でどのようにジョナサン・ラーソンを体現するのか楽しみです。
【感想(ネタバレなし)】ミュージカル映画としての楽しさを堪能しつつ、メタ的多層的に複雑に感情を揺さぶられる、超大傑作でした!!
本作はミュージカル『tick, tick...BOOM! 』を映画化するにあたり、ユニークなアプローチが取られています。
そのミュージカル自体は、ジョナサン・ラーソンが30歳目前に迫った中で、夢への挑戦のタイムリミットを感じながら、「恋人」や「友人」との距離の変化、それによるジョナサン自身の葛藤を描いていきます。
本作はそう言った30歳目前のミュージカルの内容をベースに膨らませて映像化しつつ、
その元になったミュージカルを演じる30歳以後のジョナサン自身まで、切り替えながら映し出していきます。
そのため、
ミュージカルの中身であり「時間」に焦る30歳目前の姿と、
自身の過去を俯瞰する形でミュージカルを演じる30歳後の姿を同時に見ることになり、それが斬新で面白いんですし、
その二つが合流する形になるラストはめちゃくちゃエモーショナルに上がりました。そして、そこに更に効いてくるのが、
「RENT」の成功を見守る事なく、「35歳で彼は亡くなる」という、観る側が知る現実。
劇中では、「時間」に対する捉え方の変化を描いているのに対して、私たちが知っているその現実はそれを否定するかのように働きかけていて、それから矛盾した「時間」に対する感情が沸いてくる為、めちゃくちゃ複雑で掻き乱されました。
人生は長いし短い。それがストンと入って為、「本当に豊かな映画を見たな」って、気持ちにさせられるんです。また、元のミュージカルの中身の部分も、やはり素晴らしいなと思いました。
「夢」と「大切な人々」の扱い方が凄く良い。
必ずしも「大切な人々」と同じ道を歩める訳ではないが、ジョナサンが自分の進むべき道へ覚悟を決め歩み出す時は、
必ず「大切な人々」と向き合った時だし、「大切な人々」はきっかけとして記憶に残り続ける。まるで
『ラ・ラ・ランド』のようなロマンチックさを併せ持つ映画だなと思いました。
また、楽曲も最高ですよね。
本作は映画の多層的な構造上、ミュージカル『tick, tick...BOOM! 』の楽曲、ジョナサンがその中で取り組む劇中劇の楽曲、そしてオリジナル楽曲が混ざりながら推進していくのですが、どれもジョナサン・ラーソンのポップでロックでキャッチーな楽曲センスわ感じられて最高でした。
多層的な構造と絡めながら、楽曲をどう見せて、どう当てはめるかは、監督リン=マニュエル・ミランダさんのセンスの良さが、全面に出ていて最高でした。主演のアンドリュー・ガーフィールドはオスカー取ってもおかしくない公演でしたし、彼の仲間達もジョナサン・ラーソンの特徴の一つである多様性を感じさせてくれて、凄い良かったです。
年間ベストに間違いなく入れたいですし、超多層的に刹那に生きた彼を描く、最高の映画だと思います。
めちゃくちゃオススメです!!
- 2021/11/26(金) 12:11:39|
- 2021年公開映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
次のページ