シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

☆9『ベイビー・ブローカー』

『ベイビー・ブローカー』



~あらすじ~
クリーニング店を営む借金まみれのサンヒョン(ソン・ガンホ)と、「赤ちゃんポスト」がある施設に勤務するドンス(カン・ドンウォン)の裏の顔はベイビー・ブローカーだった。ある晩、二人は若い女性ソヨン(イ・ジウン)が赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をひそかに連れ去る。翌日考え直して戻って来たソヨンが赤ん坊がいないことに気づき警察に届けようとしたため、サンヒョンとドンスは自分たちのことを彼女に告白する。





9/10★★★★★☆☆☆☆

以下 レビュー(ネタバレなしです!!)

【作品背景】

『万引き家族』や『そして父になる』『誰も知らない』などの是枝監督の最新作です。

言わずも知れた日本を代表する映画監督の1人で、本作でもカンヌ国際映画上で主演男優賞とエキュメニカル審査員賞をダブル受賞し、長く高く評価され続けています。

本作のひとつの特徴として、スタッフからキャスト、ロケ地、資本含め、完全韓国の映画産業システムの中で製作されました。

是枝監督の一本前の映画が、「真実」ってフランス映画で、近年かなり積極的に海外に出て映画制作に励んでいます。

そもそも映画の作り手を支援し、育成するシステム含めて映画産業の規模が、フランスは当然、韓国も日本より圧倒的に大きくて、そういった環境に身を置く事で、一つは異国の文化を映画に取り込む事で新しい物を出せるのではないかと言う所と、映画産業自体の在り方を体感するという意味も含めて、積極的に海外で撮っているみたいですね。

本作かなり多面的な描かれ方をするため明確な主演っていうのはいないんですが、主要人物として『パラサイト』などでお馴染みの韓国を代表する俳優ソン・ガンホ、『新感染半島』などのカン・ドンウォン、『空気人形』などのペ・ドゥナ、IUとして活動するシンガーソングライターのイ・ジウン、『野球少女』などのイ・ジュヨンが出演しています。



【感想(ネタバレなし)】


常にいろいろな角度から家族とは、もっと言うと生きる上での生活基盤における人と人の繋がりとは...って言うのを問い続けてきた是枝監督ですが、また新たな傑作を生み出してくれました。

本作はどういった角度から切り込んだかというと、「赤ちゃんポスト」と「人身売買」という非常に重たいテーマを扱っていきます。

なんですが、イ・ジウン演じる赤ちゃんを捨てた母と、ソン・ガンホなどの赤ちゃんを売るブローカーが、とある成り行きから合流し、それをペ・ドゥナなどの刑事が尾行するという構図で、そんな赤ちゃんを売る旅を通して互いの理解が高まっていくヘンテコロードムービーが中心になる為、決してひたすら重たい映画ではない。

赤ちゃんの売買や、子供を手放す事など、映画自体は彼らの最悪の行動から入るんだけど、この映画の構成として、次第に彼らの背景や心情描写が積み上げられていきます。
その結果、「行動」ではなくて、そこにある「目的」が主役になって物語を動かしていくのが、本当に心地良かった

そんな彼ら全員の心理描写が積み上げられていくうちに、親に対して、子供に対して、社会の中で多様な問題を抱える様々な人達の異なった視点を、めちゃくちゃ多面的に、濃度を持って捉えていきます。

擬似家族化していくロードムービーの中で、その状況に置かれてしまっている理不尽さと、人と人の繋がりによりそれをひとときでも溶かしてくれる温かさが常に混在していて、その一方が溢れ出す瞬間、すごい印象に残るシーンが何度かあるのですが、何度も涙が流れてしまった。

この映画を観て、子育て、子供を持つ事を幸せに感じられるのって、いかに「心の余裕を持てるか」であり、いかに「孤独を感じないか」なんじゃないかなって、改めて感じました。

一方で、ラストの落とし方が少し捻りすぎかな?と最初は思ったのですが、未来の子供をリアルな存在で映すことで、選択は確実に未来に繋がるという責任や継続性を表現できてて、良かったなと改めて思いました。

俳優陣もめちゃくちゃよくて、特に刑事役のペ・ドゥナの語りすぎずバックボーンを想像させる演技は、素晴らしいかったです。

社会の中で生きる理不尽さと、それを感じさせないくらい「人と人の繋がりよる温もりと希望」という是枝監督らしい視点が共存してて、大好きな作品になりました。

オススメです!!!



  1. 2022/06/30(木) 10:44:55|
  2. 2022年公開映画
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☆7『死刑にいたる病』

『死刑にいたる病』



~あらすじ~
理想とはかけ離れた大学生活で悶々とした日々を過ごす筧井雅也(岡田健史)のもとに、ある日1通の手紙が届く。それは大勢の若者を殺害し、そのうち9件の事件で死刑判決を受けている凶悪犯・榛村大和(阿部サダヲ)からのもので、「罪は認めるが最後の事件は冤罪(えんざい)だ。犯人はほかにいることを証明してほしい」と記されていた。かつて筧井の地元でパン屋を営んでいた旧知の榛村の願いに応えるべく、筧井は事件の真相を独自に調べ始める。
(シネマトゥデイ引用)




7/10★★★★★☆☆

以下 レビュー(ネタバレなしです!!)

【作品背景】

『孤狼の血』や『彼女がその名を知らない鳥たち』、『凶悪』の白石和彌監督の最新作。

『ホーンテッド・キャンパス』シリーズなどで知られる櫛木理宇さんが2017年に刊行した同盟小説を原作に、『そこのみにて光り輝く』や『君はいい子』『さがす』などの高田亮さんが脚本を書き下ろした本作。

熱量とパンチの効いた良作を連発する白石和彌監督と、ノワールやサスペンスの脚本に定評のある高田亮さんのタッグと言う事で、公開前から盛大に楽しみにしていた作品です!

また24件もの連続殺人を犯し、死刑判決を受けた連続殺人犯を阿部サダヲさんが、そんな殺人犯からもらった一通の手紙により、鬱屈した日々の中から巻き込まれていく大学生を岡田健史さんが演じます。

特に阿部サダヲさん演じる連続殺人犯のビジュアルがポスターから既に最高で、どのようなキャラクターとして描かれているのか非常にワクワクして鑑賞しました。




【感想(ネタバレなし)】


白石監督の作品と言う事で、ある程度期待していたんですが、思っていた以上に...激ヤバ映画でした。

本作どんな映画か...一言で表現すると、
「サイコパスに踊らされサスペンス」

阿部サダヲ演じる連続殺人犯は、「起訴された複数の殺人のうち、一件は自分じゃない」と主張する。

それを、過去に一時的に知り合いになり打ち解けてした、岡田健史さん演じる大学生に、立証して欲しいと依頼します。

彼は次第に殺人犯に翻弄され、しまいには影響を受ける...という要素が大きな軸になっているんですが、我々はその大学生の視点で、その様子を追体験させる事に特化した映画になっています。

噛み砕いて言うと、「残忍冷酷な凶悪犯なのに、親しみを感じる」、更に言うと「憧れさえ抱きそうになる」、そんな二律背反な感覚をもたらしてくれます。

この映画の一つ一つが、そこに繋がるように作られていて、
殺人拷問シーンが兎に角残酷で、殺人犯の残忍さを真っ向から描いたと思えば、「街のパン屋さん」にピッタリな包み込むように優しい表情を見せるシーンが多かったり、その両方が納得出来る演技、佇まいを説得力を持って体現する阿部サダヲさんが本当に素晴らしい。

他にも岡田健史さん演じる大学生の境遇描写の上手さであったり、面会室での「映画的な」演出であったり、怖さと温かさ、両方の感覚を持って殺人犯に翻弄され、取り込まれていくような、そんな映画になっています。

一方でこの映画、サスペンスでもあるんですよね。

「否認する一件の殺人の真相は?」
これが一本のサスペンス軸として入っている中で、なぜこの大学生が選ばれたのかとか、二人以外のキャラクターに感じる違和感とか、そういう諸々の引っかかる所が、この軸を飲み込む形でサスペンスとして機能して回収されていく構造は、素直によく出来てるなと思いました。


ただ、拷問シーンが個人的な感覚で言うと、必要以上に痛くグロすぎたかなと感じます。
観る人を選ぶと思いますし、見終えた後はその印象が残り過ぎて、本質的な面白さがぼやけてしまってるようにも思えました。
  1. 2022/05/11(水) 19:15:22|
  2. 2022年公開映画
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