シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

70『ザ・コンサルタント』ハイスペックコミュ症

今年1本目はこれ。

ベンアフレック主演、新感覚なアンチヒーロー映画。
『ザ・コンサルタント』



~あらすじ~
小さな町で会計士として働くクリスチャン(ベン・アフレック)のもとに、ある日大手企業からの財務調査のオファーが寄せられる。調査を進めるうちに彼は重大な不正を発見するが依頼は突然取り下げられ、それ以来クリスチャンは身の危険を感じるようになる。実は、彼は闇の社会の会計士として各国の危険人物の裏帳簿を握るすご腕の暗殺者だった。(シネマトゥデイ引用)





☆☆☆☆☆☆☆(70/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
贖罪、愛、因縁。
それらをぶち込んだ兄弟の重厚な人間ドラマと、溜めに溜めた感情を爆発させる肉体派格闘シーン。
日本劇場未公開ながら、格闘技映画屈指の傑作『ウォーリアー』のギャヴィン・オコナー監督の最新作!!
今年の初映画がこんなに遅くなるとは...

「表の顔と裏の顔を持つダークヒーロー。」
あれ?どこかで聞いた事が...
昨年のマイワースト映画の一つでもある、
『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でバットマンを演じ、酷評に晒されたベン・アフレックが、
汚名を返上する為、挑ん本作。
アカデミー主演男優賞がほぼ当確と言われる弟に負けてられない!?
どちらがベン・アフレック仕様の映画かと言われれば、一目瞭然。
本作では彼史上最高の当たり役を、演じています。


この映画、何がすごいかって、「え?そういう映画なん!?」って要素が見たこと無いほどてんこ盛り。
予告編を見て、
流行りの「舐めてた会計士が、実は殺人マシンでした」(ギンティ小林氏)物ねと思う人が大半...私もそう思っていましたが、開始5分と早々に「え?そういう映画なん!?」ってなっていました。
「舐めてた~」物の要素自体は間違いなくあります。
しかし、その手の映画で最大の見所となる、分かりやすいカタルシスは皆無。
敵が腰を抜かすような圧倒的な強さに対して、「ざまぁ!!」と単純に爽快感が得られる映画ではありません。


ベンアフレックが演じるのは、田舎町の会計士ウルフ。
気が狂いそうになる数十年の資料の山から、ホワイトボード一つで不正の本質を突き詰めたり、
人並み外れた射的の腕を持っていたり、
とにかくハイスペックな会計士
一方で、完璧主義な上、顧客に対して異常なほど素っ気がない一面を持っています。
お?『イコライザー』か?
となるように、ここまでは映画の定石。
しかし、驚く程ナチュラルに挟み込まれる、過去の映像によって、実は彼は○○○であるという事が、結構な序盤から、明らかになります。
(言ってもいい内容だと思いますが、予告からは分からないので、伏せておきます。)
今回のハイスペック野郎には、どうしても地に足を付けざるえない、史上最も説得力のあるハイスペックな理由があるのです。


ある日ハイスペック会計士ウルフは、真っ当な財務調査の仕事として、企業に雇われます。
そこで知り合ったのが、アナ・ケンドリック演じる会計補佐のディナ。
当然、彼女とはコミュニケーションが全然取れないのですが、御構い無しにハイスペック会計士はあっという間に不正の正体を突き詰めます。
しかし、その事がきっかけとなり、ウルフとディナは謎の組織に狙われる形になり...
とんでも無いスイッチを踏んでしまったようで、全く意味が分からないまま、襲われ始める二人。
そして謎の死に追い込まれる会社関係者。
ジョン・ヴアンサル演じる殺し屋が良い味を出してる事もあり、得体の知れない不気味な雰囲気が覆い始めます。
ここでまたまた、「あれ?そういう映画なん!?」


更にラストに向けても怒涛に、「あれ?そういう映画なん!?」となる展開があるのですが、それは是非劇場で。
そんな、様々な要素の横滑りのように見える展開の連なりですが、それらは「何故、彼がそのような人物になったか」という一点に集約していきます。
つまり、この映画は「舐めてた~」物の皮を被った、いかにしてアンチヒーローになったかの解をとく映画なのです。
決して善とはいえない彼の行動も、それは彼自身を保つ為の数式の解であり、彼にとってはそれしか解がない。
そこには、一見社会的弱者な立場でも、決して劣っているわけでは無いという、優しく普遍的で、寄り添った愛情が感じ取れました


この映画を憎めない愛おしい物にしているのは、紛れもなく役に対するベンアフレックのハマりようです。
いい歳のおっさんに言う言葉ではありませんが...本当かわいいんです。
人との接し方に戸惑う ハイスペック野郎。
人に対して初めて惹かれて行く ハイスペック野郎。
彼とアナ・ケンドリックの「答え合わせ」のシーンは最高のでした。
また、盟友マッド・デイモンのボーンシリーズさながら、インドネシアの武術シラットを活用したアクションシーンも良かったのではないでしょうか。


憎めないだなんて、先に書いてしまいましたが、作品自体を心から楽しめたかと聞かれれば、決してそんな事はありませんでした。
伏線を回収する事で、横滑りしていく展開が、作中の空気自体を全く違う方向に捻じ曲げてしまいます。
あの演出・盛り上げは結局なんだったの?と頻繁に違和感を感じてしまいました。

しかしそれも含めて、なかなか見た事のない味のある映画になっています。
話題作が続きますが、是非劇場で見ていただきたい一作です!!




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  1. 2017/01/27(金) 20:38:59|
  2. 2017年公開映画
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2016年映画ベスト20

明けましておめでとうございます!!

年が明けて一週間。
今更ながら2016年の映画を振り返り、ベスト20を書き記したいと思います。

2016年に日本公開された映画のうち、鑑賞数は64本
うち6割が洋画、4割が邦画といった所。
全体数で見ると、去年より3割減です。

この一年は何と言っても、近年稀にみる邦画の当たり年でした。
特に『シン・ゴジラ』から『君の名は。』までの一連のムーブメントは圧巻。
また、メガヒットではない映画でも、「掘ればほぼ当たる」状態(地雷は避けてる!?)で、邦画にとって本当に充実の一年でした。
一方の洋画は飛び抜けた作品は少なかった印象です。
そんな中でも、アメコミイヤーと言って良い一年。
DC、マーベル共にクロスオーバーのピークに位置する作品を投入してきましたが、この一年で明暗が完全にはっきりしてしまいました...


それでは早速、ランキング!!
(順番つけるとかよくないよ!!!)


まずは20位~11位
どれも、10位になってもおかしくない。
めちゃくちゃ迷いました。20位が二つあるのはご勘弁...

20位『日本で一番悪い奴ら』
20位『リリーのすべて』
19位『君の名は。』
18位『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』
17位『何者』
16位『ズートピア』
15位『スポットライト 世紀のスクープ』
14位『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』
13位『白鯨との戦い』
12位『デッドプール』
11位『オデッセイ』

次に10位~6位!選べない!!

10位『エクス・マキナ』
年末最後にDVDにて。
流行りのAI物で、密室でほぼ三人しか登場しない低予算映画なんだけど、人工知能を扱った作品の中では一番好き。
何が真意で、どんな思惑が...不安と好奇心が止まらない。
今だからこそ、どこか現実感があり、未来がおぞましく感じる。
もうそういう時代に来ちゃってるんだよ。

9位『ヘイトフル・エイト』
タラちゃん史上、一番はまった。
南北戦争後という時代背景を上手く利用し、密室内8人の異なる背景に、嘘と警戒、皮肉と差別を交えて織りなす会話。
タランティーノお得意のだらだらした意味のないように見える会話が、今作では最大限に作品の魅力になっている。全然冗長に感じない。なんてハラハラするんだ!!
スリリングに保つ一本の糸が切れた時...

8位『シング・ストリート 未来へのうた』
ジョン・カーニー監督、大好き。
ハッピーな映像の裏に常にある、行き詰まった未来へのサッドな感情。
作品中で最もハッピーなはずの妄想シーンで、号泣。
このハッピーサッドなバランスが驚くほど心地よい。
音楽の楽しさをダイレクトに伝える毎度おなじみの「重なっていく瞬間」を描く描写も最高。

7位『シン・ゴジラ』
もし、現代社会にゴジラが現れたら??
ハリウッド版とは異なり、よりマクロな視点で右往左往する人々をとらえた群像劇。
テンポが良いから、ぐいぐい引き込まれる。
右往左往する様子はどれもこれも、3.11を想起させ、今の日本で一番見たくない、一番の怖れている形をゴジラに投影。
でも、でも、やるんだよ!!!人間舐めるな!!!

6位『海よりもまだ深く』
こんなはずじゃなかった...
大人なら誰しも、大なり小なり持っている感情をこれでもかと揺さぶってくる。
是枝監督の作品はどれもこれも好きですが、今作が最高傑作だと個人的に思っています
何も起こらないように見える我々の日常こそ、何かの連続で成り立っている...
こんな当然の事が、是枝作品で毎度思い知らされます。

いよいよベスト5!どれも1位!!!

5位『ヒメアノ~ル』
ラブコメ×サイコパス。映画にレ◯プされました。
年間数十本見ていたら、大抵の映画は記憶から消えかかるのだが、この映画は脳裏にこべりついて離さない。
吉田監督の趣味の悪さが行き着くとここまで面白いのかと。
森田剛演じるサイコ森田がいよいよ...となる、ラブコメ最高潮から...タイトルどーん!!の出し方とか本当最高。

4位『この世界の片隅に』
完成度は全作品中で今年一番の、アニメーション映画。
驚くほどテンポよく、戦時中の日常が流れてく。
まさに、世間知らずでぼーっとしているすずちゃんの見た世界そのもの。
この世界の終着点を、見ている側は知っている。
楽しげな日常を描くことが、逆に胸を締め付けてくるとんでもない映画。
ただただ、この世界の片隅に居場所があればよかったのに....

3位『ヒトラーの忘れ物』
2015年の東京国際映画祭で鑑賞。日本配給は2016年なので、ランキングに入れました。
救いのない話を描いているようで、その中で辛うじて辛うじて辛うじてある救い。
それは、人と人が触れ合ってのみ取り戻される尊厳。
内に向く思想が、人を残酷にし戦争に導いてしまうんだなと痛感させられます。
緊迫感も半端ない傑作、まだ映画館で見れますので是非!!

2位『ハドソン川の軌跡』
御爺クリント・イーストウッドが、またやってくれました。
この映画、完璧さ故にとにかく美しい。
3度の不時着シーンの使い方、話の進め方は惚れ惚れだし、中盤のニューヨークの良心の切り取り方は鳥肌物。
誰もがヒーローになりたいと思っている訳ではなく、目の前のやるべき事をやるだけ。
プロフェッショナルの集合が見せる、あまりの美しい光景に、涙が止まりませんでした。

1位『湯を沸かすほどの熱い愛』
2016年、堂々の一位はこの作品!
気の利いた脚本と丁寧な演出、これに尽きる。
直接的な感動表現ではなく、細かなストーリー同士が絡まって、絡まって、絡まって、つい泣けてしまう。
自分も気づかないうちに、涙が頬を伝っている経験は初めてでした。
ありふれた「闘病と家族の絆」モノに一線を画する熱さ。
見終えた後も数日は心地さが抜けず...
映画って、ほんと良いものですね。



2017年もどんな映画に出会えるか楽しみ楽しみ。





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  1. 2017/01/09(月) 11:37:48|
  2. 2016年公開映画
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80『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』そのバトンを繋げ!

名もなき者たちの、光り輝く物語。

スター・ウォーズ・ストーリー始動!!
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』



~あらすじ~
帝国軍の誇る究極兵器デス・スターによって、銀河は混乱と恐怖にさらされていた。窃盗、暴行、書類偽造などの悪事を重ねてきたジン(フェリシティ・ジョーンズ)は反乱軍に加わり、あるミッションを下される。それはデス・スターの設計図を奪うという、困難かつ無謀なものであった。彼女を筆頭に、キャシアン(ディエゴ・ルナ)、チアルート(ドニー・イェン)、ベイズ(チアン・ウェン)、ボーティー(リズ・アーメッド)といったメンバーで極秘部隊ローグ・ワンが結成され、ミッションが始動するが……。
(シネマトゥデイ引用)





☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『スター・ウォーズ』シリーズの最新作!!
正確には、1977年から83年のエピソードⅣ~Ⅵ、1999年から2005年のエピソードⅠ~Ⅲ、そして昨年公開されたエピソードⅦとなる『フォースの覚醒』と、一連の選ばれた者たちの物語、サーガの中では絶対に描かれない....幾多にわたり存在する無数の物語を描くのが、「スター・ウォーズ・ストーリー」
今後1年おきに、「スター・ウォーズ・サーガ」と「スター・ウォーズ・ストーリー」を順に、半永久的に描いていくという、ディズニー×世界最大コンテンツだからこそなせる、過去例のない壮大な計画。

その「スター・ウォーズ・ストーリー」の第一弾となる今作を監督するのが、『GODZILLA』のギャレス・エドワーズ。
主人公ジンを演じることのは『博士と彼女のセオリー』のフェリシア・ジョーンズ。
彼女と共に「ローグ・ワン(=はぐれ者)」を形成していくキャラクターの1人に、香港の生んだ大スター ドニー・イェンが盲目の戦士チアルートを演じているのも話題になっています。
日本文化から多大な影響を受けているシリーズですが、なんと東洋人の主要人物への起用はこれが初めてです。

内容はと言いますと、今作は1977年公開のエピソードⅣ新たなる希望の直前。
世界一有名なオープニングクレジットにて、「反乱軍初めての勝利。帝国軍の巨大兵器デススターの弱点を示す設計図を入手」というたった数行の内容を、2時間強の映画にしたものになります。
つまり、あの「エピソードⅣ 新たなる希望」の冒頭の10分前までを描いた映画なのです。


プロローグ、ジンの幼少期から、映画は始まります。
まず驚くのが、あのオープニングクレジットが無い...!?
それどころか見進めていくと、「スペースオペラ」であったサーガのシリーズとは、全く異なるという事に気がついていきます。
決して選ばれた者たちには見えない地味な面々。
ドラマチックさを最小限に抑えたストーリー。
シリーズ最大級に恐怖や理不尽さを煽るビジュアル。

「エピソードⅣ 新たなる希望」が希望や明るさが満ちているのに対して、その直前の話であるはずの今作は正反対です。
デススターの大きさ表現や、星が消え去る生々しい描写、そして暗黒からのダースベイダー登場シーンなど、決してサービスカットではない(最後を覗いて)絶望をじわじわと浸透させてきます。
これは犠牲なしでは終われない戦争なんです。

地味な面々の中でも、特にこの映画を象徴していると感じたのが、反乱軍で任務を遂行するキャシアン・アンドーです。
同じ様な立ち位置であった、スペースオペラであるサーガの集大成であった前作「エピソードⅦ フォースの覚醒」に登場するポー・ダメロンとは対極。
ダメロンは心地良いくらいナイスガイが画面から滲み出ていたのに対し、キャシアンは地味で正義感がない、任務の為なら一般人を殺すような戦士です。
決して、「エピソードⅦ フォースの覚醒」のように、キャラクターに対しても一方通行で乗せてくれません。
彼等が団結して立ち向かっていくきっかけも、分かりやすく「光」に吸い寄せられていく訳もなく、各々が全く別々の信念の元で共通の目的に向かっていきます。
こんな単純には上がらない、地に足をつけた地味な展開は、決してサーガでは描けないでしょう。

そしてそんな地味で、選ばれた者ではない彼等だからこそ、クライマックスの戦争...特にラスト15分は途轍もなく素晴らしい出来栄えになっています。
エピソードⅣに彼等がいない事からも、ハッピーエンドではない事は容易に想像できてましたが、彼等の覚悟と犠牲の物語にこんなにも涙が出てくるとは思いませんでした。
決して見る事はないかもしれない「希望」の先をただただ信じて....
エピソードⅣとは正反対と書きましたか、この映画もエピソードⅣ同様に「希望」が描かれているのです。
作風は正反対かもしれないが、同一線上の「希望」が流れるアナザーストーリー。
たった数行だったはずが、エピソードⅣを2倍にも3倍にも面白くしてしまう。
この作品こそが正しいスピンオフの在り方だと強く感じました。

また、盲目の僧侶チアルートと相棒のベイズの物語も心を打たれます。
チアルートを演じるドニー・イェンのアクションは今作一番の盛り上がり所。
アクションで語られる、ブロマンス的な関係性も最高です。
しかしそれ以上に、フォースを信じるチアルートを半ばバカにしていたベイズが、最後に取る行動があまりにも映画的で、作品自体のクライマックスと重なって、震え上がりました。

一方で、アクションの中で進行し、いかにキャラクターを立たせるかが全てであった「エピソードⅦ フォースの覚醒」の魅力が限りなく0に近い為、シリーズにスペースオペラとしての魅力を求めてる人にとっては、がっかりなのも間違いないと思います。

また、人物の信条変化をうまく感じ取れない点も否めません。
特に演技なのか演出なのか、主人公の心情変化が全く伝わらず、事態に応じて淡々と行動を変えた印象が残ります。
そういう作品なんだけど、各々の印象が地味な上で、心情変化がいまいち伝わらなければ、当然ドラマパートに盛り上がりが欠けます。
大擁護派の自分としても、中盤は退屈していました。

とはいえ、本編をより色鮮やかにする、名もなき者たちの光り輝く物語。
めちゃくちゃ大好きです!
是非劇場で!!





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  1. 2017/01/05(木) 21:12:00|
  2. 2016年公開映画
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