シネマ・ジャンプストリート

劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

70『キング・アーサー』you created me

ガイ・リッチーの最新作は新感覚な伝説映画!

『キング・アーサー



~あらすじ~
王の息子として生まれ、その跡を継ぐ者とされていたアーサー(チャーリー・ハナム)。だが、暴君ヴォーティガン(ジュード・ロウ)によって父と母を殺され、スラム街へと追いやられてしまう。過酷な環境の中、アーサーは生き抜く知恵を身に付け、肉体を鍛える。やがて、無双の力をもたらすとされる聖剣エクスカリバーを手にする。仲間たちと共に圧政を敷くヴォーティガンを倒し、王座に就こうとするアーサーだったが……。
(シネマトゥデイ引用)





☆☆☆☆☆☆☆(70/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『シャーロック・ホームズ』シリーズ、『コードネーム U.N.C.L.E』のガイ・リッチー最新作は、全六部作構想!?のアーサー王物語第一作目にして、超大胆解釈なアーサー王誕生譚。
主演のアーサーを『パシフィック・リム』のチャーリー・ハナム、アーサーの両親を残虐した暴君にジュード・ロウ、後の円卓の騎士をアストリッド・ベルジュ=フリスベやジャイモン・フンスーらが演じます。

アーサー王伝説といえば『エクスカリバー(1981年ジョン・ブアマン)』や『トゥルーナイト(1995年ジェリー・ザッカー)』、『キング・アーサー(2004年アントアン・フークア)』を始めとする数々の映画や、オペラに舞台と幾多の作品で題材とされた中世ヨーロッパの騎士道物語。
そんな使い古された!?伝説の物語を、緻密な脚本を独特なハイテンポに乗せてお届けする、スタイリッシュなストーリーテリングが武器のガイ・リッチーが監督。
という事で興味津々で見に行ったのですが、やはり独特の感覚に覆われる映画になっていました。


スラムのガキから王になれ!
とはいっても、後のアーサー王となる少年は王の息子。
しかし、叔父ヴォーティガンのクーデターにより、両親は殺され、自らはスラムの街に潜みながら暮らす事となります。
何も力の持たないスラムのガキが、そこで鍛え上げられ、自らの力で成り上り、街で一目置かれる存在へと成長していくのですが、この成長シーケンスが最高に気持ち良い!
こっちを置いてっちゃうくらいの小気味良い大胆演出と、それなのに挟み込まれる無駄な会話/場面というのっけからガイ・リッチー節が全開です。
さらに、これでもかとケレン味を乗せたアクションと共に展開する物語。
伝説の剣エクスカリバーを抜き、自らの力を解放させる修行の末に、大ボスと敵対していくという、絵に描いたよな王道な神話的内容なんだけど、それに前述のガイ・リッチー節が乗っかるのだから、新感覚!!

大人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』風な美術も、作品に心地よいスペクタクル感も上乗せします。
また、基本的に抜けが良い映画なのですが、ここぞのキャラクターや生物の癖がすごい。
グロテスクなのかすらもわからない謎の海中生物や、30メートル超の巨大象などが、突如インパクトを残してきます。
そしてこの映画に欠かせないのが、ジェード・ロウが喜々悠々と演じる暴君ヴォーティガンの変態っぷり。
泣いてるのか笑ってるのかわからない表情で狂っていくジェード・ロウ、最高です。

ただ、全面的に最高かと聞かれれば、決してそんな事はありません。
特にアクションの見にくさ。
覚醒した瞬間の無双っぷりなんかは最高なんですが、事態がインフレしていくにつれて、アクション中に何が起こってるのかわからなくなります。
展開の早さも、やはり食い合わせが悪い所もあり、結構置いてけぼりにされちゃいました。

とはいえ、映画館で観る価値は十分。
全六部の意欲的大作の第1作、観ないわけにはいかないでしょう!

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  1. 2017/06/27(火) 18:56:04|
  2. 2017年公開映画
  3. | トラックバック:6
  4. | コメント:0

70『パトリオット・デイ』憎しみと戦える武器は愛

実際のテロ事件をベースにした、群像サスペンス。

『パトリオット・デイ


~あらすじ~
2013年4月15日。アメリカ独立戦争開戦を記念して毎年開催されるボストンマラソンで、ギャラリーの歓声を受けながら多くのランナーが疾走していた。そしてすさまじい爆発音がとどろき、煙が吹き上がる。街がパニックに包まれる中、FBIは爆発をテロと断定。ボストン警察のトミー(マーク・ウォールバーグ)は、捜査の指揮を執る捜査官リック(ケヴィン・ベーコン)らFBIとぶつかり合いながらも共に犯人を追う。やがて、黒い帽子の男と白い帽子の男の存在が捜査線上に浮かび……。
(シネマトゥデイ引用)








☆☆☆☆☆☆☆(70/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
2013年に実際に発生したボストンマラソンゴール地点での爆破テロとその後の追跡劇を描く群像サスペンス。
監督は、『ローン・サバイバー』や『バーニング・オーシャン』など近年、臨場感ある映像に定評のあるピーター・バーグ!!
主演は、『ローン・サバイバー』でもタッグを組んだマーク・ウォールバーグ。
ケヴィン・ベーコンやジョン・グッドマン、JKシモンズなど、中々通好みな面々が脇を固めます。


今も尚、生々しく記憶されるテロ事件。
事件自体の記憶はまだ新しく、その後の逃走劇の顛末も、検索するとすぐに出てきます。
そんな時期尚早とも思われるボストンでの事件を扱った今作。
随所に本物の映像も挿入しながら、ゴール地点のあまりに悲惨な光景や、平和な街が戦場と化す恐ろしさなど、日常に潜むテロの恐怖を突きつけてきます。
しかし実録物として、リアリズムに徹底している訳ではありません。
実はこの映画、基本的には事件の当事者役が多く登場するのですが、主人公の警察官トミーは実在しない人物です。
彼を映画の中心として組み立てた脚本と、ピーターバークの巧みな演出により、随所に事件の強烈な印象を残しつつも、結末有りの事件に対して劇映画として臨場感を持たせた、完璧なバランスの映画になっています。


また今作は、非常に多彩な人物が登場、彼らが次第にテロと逃亡劇で交差していく群像劇になっています。
トミーの同僚や上司、家族、州知事にFBI、事件の被害者に、逃亡劇に巻き込まれた者たち、そしてテロリスト...
彼ら一人一人の過去を語るなどという野暮な事は決してしません。
事件の数時間前から始まる物語、その日を体感するかのように決して時間は立ち止まらず、何がおきて、誰がどう行動したかだけで、あらゆる人物の背景を語りきります。
途方もない数の人物を扱っているにも関わらず、最後は多くの人物に(犯人にさえも...)共感、まんまとしてやられました。

中でも印象的なのが、ボストン市民一人一人の物語。
一人に割く時間は短いはずなのに、彼らが憎しみによる悲劇を、愛で乗り越えようとする姿に、涙が止まりませんでした。
愛は憎しみじゃ砕けないし、憎しみと戦えるのは愛しかない。


ドラマで感情を揺さぶられた分、「捜査」や「逃亡劇」が逆に間延びを感じてしまいましたが...

群像実録サスペンスとして、教科書に載せても良いくらい、素晴らしく整備された映画です!
ぜひ、劇場で!





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  1. 2017/06/19(月) 23:12:41|
  2. 2017年公開映画
  3. | トラックバック:10
  4. | コメント:0

75『22年目の告白 私が殺人犯です』それはまるでファントムペインのような

藤原竜也をどこまでも求めて...

入江悠監督の最新作はサイコサスペンス!
『22年目の告白 私が殺人犯です』





~あらすじ~
阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が発生した1995年、三つのルールに基づく5件の連続殺人事件が起こる。担当刑事の牧村航(伊藤英明)はもう少しで犯人を捕まえられそうだったものの、尊敬する上司を亡き者にされた上に犯人を取り逃してしまう。その後事件は解決することなく時効を迎えるが、ある日、曾根崎雅人(藤原竜也)と名乗る男が事件の内容をつづった手記「私が殺人犯です」を発表し……。
(シネマトゥデイ引用)








☆☆☆☆☆☆☆(75/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『SR サイタマノラッパー』や『ジョーカーゲーム』『太陽』の入江悠監督最新作!
あらゆるエンターテイメントなフィクションジャンルに対し、「日本でも、いや日本だから出来るはずだ!」と臆することなく強気で挑んでいる、日本で唯一無二の映画監督です。
そんな彼が、今作で藤原竜也&伊藤英明のW主演に迎えて挑んだのが、ノワールであり、サイコサスペンス。
秀作韓国映画の『殺人の告白』が元になっているのですが、バイオレントな要素は残しつつも、日本だからこその背景と人間ドラマを絶妙に組み込んだ、より「感情」に焦点を当てた、素晴らしい日本のサイコサスペンス映画になっていました!

「はじめまして、私が殺人犯です。」
時効を迎えた連続殺人事件で、時効成立後に記者会見を開き、衝撃の告白をする曾根崎雅人。
目的は、正確に語られていない自身の事件を明らかにし、贖罪すること。
しかし、「被害者の最も近しい人に、死ぬ瞬間を間近で見させる」という事件のあまりに生々しい詳細を、彼は論文でも発表するかのように意気揚々と説明します。
この記者会見に始まり、本の出版、関係者への謝罪、そして握手会、、、
映画の前半は、藤原竜也演じるこの男のサイコパスな言動と、周囲をカルト化させていくカリスマ性により、もう画面から目が離せなくなっていきます。

もう一人の主人公である、伊藤英明演じる中堅刑事の牧村航。
彼もまた、連続殺人事件によって、人生を狂わされた一人(詳しくは知らない方がよい!)です。
彼が中盤以降の物語を進め、特に事件の詳細が明らかになるにつれ、人間の「感情」を語る役割を担っていきます。

1995年という連続殺人事件の起きた時代。
この時代には二つの意味があります。
ひとつは、「時効制度の改革前夜」だという事。
この年を境に、殺人事件のような死刑の対象になりうる事件は、時効は適用されなくなりました。
この映画の設定が成立する最後の年だった訳です。
そしてもう一つ、これこそがこの映画のテーマになっていく、阪神大震災や地下鉄サリン事件等「ショッキングな出来事が相次いで起きた時代」だという事。
秀逸すぎる冒頭が映像だけで語るように、時間などあっという間に流れ去り、事件は風化してしまいます。
しかし、それは被害者の関係者にとっては全く違います。
どれだけ時間がたっても、無くした腕が痛むファントムペインのように、無いものを治療する事などできません。
特に、目の前で最も大切な人が殺されたりしたならば...
この映画では、リメイク元の韓国映画ではある意味切り捨てていた所まで、日本独自の設定を持ち込む事で掘り下げに成功しているのが、本当に素晴らしいのです。

そんなこの映画のテーマを見事に利用した、驚きの展開が、後半で待ち受けます。
詳しく書く事は出来ませんが、見事に溜飲を下げられました...
特にテレビ中継シーンが印象的ですが、人と人が対峙している場面での、物語が動く予感、これが本当最高でした。

多少の嘘くさいシーンはあれど、
私はリメイク元作品の上をいっていると思います!
劇場で見るべき作品です!





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  1. 2017/06/16(金) 10:16:34|
  2. 2017年公開映画
  3. | トラックバック:6
  4. | コメント:0

90『メッセージ』未知との遭遇の先へ...

映画、SFだからこその感動。

鬼才天才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の最新作。
『メッセージ』



~あらすじ~
巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女にある感覚が...やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し……。
(シネマトゥデイ引用)






☆☆☆☆☆☆☆☆(90/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
『ボーダーライン』や『プリズナーズ』、問題作『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の最新作!
温度は低いが湿度は高い傑作を連発、今秋には『ブレードランナー』続編の公開も控える、今最も注目すべき監督の一人です。
そんな鬼才の最新作は、テッド・チャン著の「あなたの人生の物語」を原作とするSF。
主演にエイミーアダムス、共演にジェレミー・レナーを迎えた今作は、今年度のアカデミー賞でも複数ノミネート、「音響編集賞」を受賞しました。

興奮を押されられず、早速の雑感。
この監督の作品、どれもこれも一癖も二癖もあり大好きなんですが、今作ははっきり飛び抜けています。
ネタバレなしでこの映画の良さを伝えるのは非常に難しい...
なんとかネタバレなしで感想を書きますが、このレビューすら見ずに、全身全霊で浸ってほしい。
それほどの極上の映画体験。
2017年で一本しか映画が見れないとしたら、私はこの映画を選びます!



エイミー・アダムスが演じるルイーズは、大学で弁を取る、言語学の第一人者。
ふとした瞬間に、最愛の娘を失った悪夢を見てしまいます。
そんな中で突如、複数の巨大宇宙船が世界各地に襲来したというニュースが飛び込んできます。
どうやら人類とコミュニケーションを試みる地球外生命体。
彼女の元に、軍と共に彼らの目的を探るよう、依頼がきます。

侵略なのか?友好なのか?それとも単なる旅行なのか?
目的も言語もテクノロジーも不明な状況で、宇宙船の中へ招かれ...
未知との遭遇に、未知への恐怖、そして未知の体験。
これらは序章に過ぎません。
「言語は思考を支配する。」
そんな考えの元で、なんとか彼らとコミュニケーションを図るべく、文字の解明と意思の伝達手段構築を、緻密に計算された手順で取り組みはじめます。
改めて気がつく言語という物自体の果てしなさと、僅かに意思疎通が出来た時の高揚。
かつてない、「未知との遭遇」のその先をこの映画は体験させてくれます。

更に物語はあらぬ方向へ。
内向きな「今の世界」を捉えた、あまりに滑稽で情けない、でも確信をつくような、皮肉な展開になっていきます。
手を取りあう普遍的なメッセージ。
ここまでで十二分に面白いのですが、この映画の傑作たる所以は、更にこの先にこそあります。

張り巡らせた伏線を見事なまでに回収しながら、この手の普通の映画とは全く逆のベクトルの人生賛歌。
映画だからこそ、SFだからこそ可能にする語り方があまりに感動的で、「あの映画」(リンク先にネタバレ)とは反対のはず哲学にもう大納得!!
そうなんだよ、愛おしいんだよ。

こんな映画体験した事がないし、これだから映画はやめられない。

もちろん、自然音を巧みに使った、音のトータルコーディネートも素晴らしく、唯一無二の映画空間を与えてくれます。


映画好きにも、SF好きにも、今の映画に飽き気味な人にも是非!
オススメです!
映画という言語で、思考を支配されるはず。






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  1. 2017/06/02(金) 19:27:22|
  2. 2017年公開映画
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  4. | コメント:2