印象派映像作家ノーラン監督の会心作!
『ダンケルク』
~あらすじ~1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) ハリウッドを代表する映画監督でありながら、常に賛否両論が渦巻く。
『インターステラー』や『ダークナイト』シリーズ、『インセプション』のクリストファー・ノーラン監督の最新作は、初めて実話ベースの戦争映画!
圧倒的な映像表現と壮大な音楽、複雑な時系列操作やクロス・カッティングを活用した奇抜なプロット、膨大な情報量に、物語上の嘘。
直接物語としては必然性を持たない要素や、リアルな世界ではありえない嘘による印象操作で、さもリアルでしょ?完璧でしょ?と真面目なルックをしている...そんなノーランの作品は批判されがち。
私はどうかというと、ノーランが作る印象で実際に感情を持っていかれるのだから、寧ろ映像作家として天才的に腕があるんじゃないの?と思っており、全然好きです!
好き嫌いは割れども、絶対に評価されるべき監督と思ってます。
そんな
印象操作の天才ノーランの最新作は、第二次世界大戦下の「ダンケルクの戦い」、
ドイツ軍のイギリス侵攻により、大軍に囲まれ孤立無援となったイギリス・フランス兵約35万人が6日かけて救出された...そんな歴史的奇跡の映像化に挑みます。
「陸」「海」「空」交差するオムニバス映画のような作りで描かれる今作。
そんな「陸」の主人公を演じるのが期待の新星俳優フィオン・ホワイトヘッド。
「海」にはオスカー俳優のマーク・ライランス。
「空」にはいま最も味のある俳優トム・ハーディなどが登場します。
いきなり戦場に放り込まれる冒頭。
押し寄せてくるドイツ軍から、走って逃げる若者に寄り添った場面から始まり、
放り込まれたら最後、ラストまで「ダンケルク」という戦場に私達を縛り付けます。前述の通り、今作は「陸」「海」「空」三つの視点から成り立っています。
それら3つの戦場を交互に見せる中、どの場面においても多くが兵士にピタリとついた視点で描かれます。
目線近くで映されるカメラワークが非常に印象的で、POVで目線を体感させるわけではないのですが、
海に沈むとカメラも同時に沈んだり、近づく爆撃がカメラに飛び込んできたり、戦争の圧倒的な命を奪う力を体感させます。私は通常スクリーンでしか見ていませんが、大画面であればより没入感が増すのは明らかで、可能であるならばより大きなスクリーンをオススメします!
また、説明セリフやバックグランドの説明なんてのもほとんどありません。
どういう戦争なのかのロジックは抜きに、
その身一つで右も左も分からないまま戦争に放り込まれる....これは大半の兵士目線そのものなのかもしれません。もちろん登場人物の背景もほとんどわかりませんが、この映画には丁寧な人物描写など必要ありません。
同じく今年度の傑作戦争映画に『ハクソーリッジ』がありますが、丁寧な人物描写をする事で戦争の残酷さを強調したそちらとは好対象。
『ダンケルク』では、
圧倒的な映像表現で描かれる彼らに寄り添った戦争体験、その環境下での彼らのリアクション、そして大きな空白が、観る人毎に適した無数のストーリーを生み出し、合わせ鏡としてその場にいるような圧倒的な臨場感と没入感を加速させていきます。そんな圧倒的な臨場感と没入感を描く為に、多くの物語上の嘘を駆使している辺り、やはりノーラン映画だなと感じます。
まず、人体破壊がほとんど出ません。
戦争に人体破壊がないのはおかしいのですが、没入感を際立たせる為に、戦争から人体破壊を排除する嘘をついています。
更に史実に対する嘘もいくつか。
実際は大量に飛んでいたスピットファイアも、今作は3機しか出てきません。
CGで中途半端な現実を描くよりも、3機の本物で物語に嘘をつく方を優先しています。
また、時間軸の交差のギミックも、内容に必然性を感じませんでした。
否定派から見れば、そんな多くの嘘で描いているのに、「類似戦争体験」と真面目なルックをしているのが、今作も気に入らないだろうなと感じます。
しかし私は、
それら効果でまんまと戦場に没入、めちゃくちゃ楽しんでしまいました。とにかく、稀代のフィルムメーカーの最新作にして、大画面で見てこその映画、
是非劇場で見ていただきたい!!
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- 2017/09/28(木) 23:15:57|
- 2017年公開映画
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新境地だけども、是枝ワールド。
『三度目の殺人』
~あらすじ~勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが……。
(シネトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) 是枝作品に外れなし。名実共に日本を代表する映画監督、是枝裕和最新作!
2016年6月に当ブログで扱った超傑作
『海よりもまだ深く』(リンク先レビュー)からまだ1年と少し。
このスパンで安定超良質な日本映画を観れるありがたさを実感しています。
ドキュメンタリーのような撮り方で、日常に転がる普遍的な何かを浮かび上がらせる天才。
それでいて、しっかり面白さは持続させる。
見終えた後の余韻に感じる作家性とか、役者の魅力を引き出すのが上手いとか、子供の演技を引き出す是枝マジックとか...
褒め出すとキリがない、是枝監督の長編12作目はなんとなんと法廷サスペンスで新境地!?主演は『そして父になる』以来、二度目のタッグとなる国民的スターでマルチローラーの福山雅治。
共演するのが、是枝監督が「日本で一番演技の上手い俳優」と讃える役所広司、『海街diary』で是枝マジックの演出を受けた広瀬すず。
他にも、今話題の斉藤由貴や、満島真之介、吉田鋼太郎が魅力を引き出されております。
普通に生活をしていると特別意識する事はない何か。
しかし、確実に私たちの生活に密接している。
上記からすぐに連想される「家族」を描く事が多い是枝監督ですが、今作で監督が注目したのは「司法」です。
福山雅治演じる弁護士の重盛。
彼は、被告を勝たせる事が全てで、真実は重要ではないと考えています。
一見傲慢に見える彼の姿勢ですが、弁護士は司法制度の中では唯一被告の味方であり、ある意味では司法制度が弁護士のあるべき姿をそのように求めていると言っていいのかもしれません。
実際に何が事実かではなく、
「何を事実にするか」こそが裁判の全てだという論理は、劇中の是枝監督お得意のドキュメンタリチックな演出で納得させられていきます。
しかし、今回弁護する被告は訳が違います。
役所広司演じる三隅は、首になった職場の工場長を殺害。
計画的な殺意はなかったという「事実」で裁判を戦おうとする重盛ですが...
供述を二転三転させる役所広司演じる三隅によって翻弄されます。
それにより、
「真実にたどり着く事」を必要としない裁判制度の中で、「真実を作る事」すらも揺るがされていく...本来あった司法制度の危うさに対して、更に一石を投じて非常にサスペンスフルな状況に追い込んでいきます。
そんな中で見えてきた「真実」のような何か。
しかし!?ラスト近くで更に転換する状況。
語らなさ、わからなさによって、見ている物は願望を込めて真実を作っていく。私達が普段
真実と思っている物すらも、裁判の中で作られていく真実と違いなく、それも「作られた真実」なのかもしれない...何が三度目なのか。犯人はだれなのか。
オープンエンドな結末。
是枝監督すらも「わからない」という真相。
それでも惹きつける。
いや、
それこそが真実の真理だからなのか...!?と感じた時、震えが止まりませんでした。
この余韻...やっぱり是枝監督の映画そのものでした。
超絶脚本と演出だけでなく、この映画を語るのに欠かせないのが
役者陣の熱演です。
特に福山雅治と役所広司の面会室での、言葉による殴り合い、ボクシング。
二人の熱のこもった演技が、この作品の格を一段も二段も引き上げています。
もちろん、広瀬すずや満島真之介、吉田鋼太郎らの演技も素晴らしいです。
今回本当嬉しいのが、内容はもちろんながら、実際に大ヒットを記録している事。
ここに来るまでキャスティングやプロモーションなど多少の折れはあっただろうけど、
自らの作家性を貫いた結果、名と実が両立した稀代の映画監督になったという、この事実が本当価値ある事だなと感じています。
やっぱり是枝監督、大好きだなぁとしみじみ感じました。
日本が世界に誇る映画、是非見てください!
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- 2017/09/26(火) 18:39:25|
- 2017年公開映画
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異色な視点のSF映画。
黒沢清監督の最新作!
『散歩する侵略者』
~あらすじ~鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が、数日間行方をくらまし、別人のようになって帰ってくる。これまでの態度が一変した夫に疑念を抱く鳴海は、突然真治から「地球を侵略しに来た」と告白され戸惑う。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こったのを機に、さまざまな現象が発生し、不穏な空気が漂い始める。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆(70/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) 『トウキョウソナタ』や『岸辺の旅』、『クリーピー 偽りの隣人』、『回路』などの世界のKUROSAWAこと、黒沢清監督の最新作!
元々はホラー畑出身の監督で、Jホラー独特のねっとりとした印象はなく、乾いた作風が持ち味。
近年はホラーではなく幅広い作品を作っていますが、どれも根底にはしっかり「黒沢清監督らしさ」、
独特の不協和音や突き放した視線を感じます。
そんな世界で活躍中の黒沢清監督の最新作は、劇団イキウメの舞台を元にしたSF映画、宇宙人侵略物です。
侵略者になった夫を松田龍作、翻弄される妻を長澤まさみ、フリージャーナリストを長谷川博己が演じます。
また、他にも前田敦子や満島真之介、東出昌大、小泉今日子と豪華キャストが集結。
独特の視点を持った、嘘くさを一切感じない和製なSF映画になってます!
レビューは後ほど。
- 2017/09/26(火) 16:48:03|
- 2017年公開映画
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何処を取れども超満点な韓国製ゾンビ映画!
『新感染 ファイナル・エクスプレス』
~あらすじ~別居中の妻がいるプサンへ、幼い娘スアンを送り届けることになったファンドマネージャーのソグ(コン・ユ)。夜明け前のソウル駅からプサン行きの特急列車KTX101号に乗り込むが、発車直前に感染者を狂暴化させるウイルスに侵された女性も乗ってくる。そして乗務員が彼女にかみつかれ、瞬く間に車内はパニック状態に。異変に気づいたソグは、サンファ(マ・ドンソク)とその妻ソンギョン(チョン・ユミ)らと共に車両の後方へ避難する。やがて彼らは、車内のテレビで韓国政府が国家非常事態宣言を発令したことを知り……。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆(95/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) またまた年間ベスト級!まさかまさかの韓国初のゾンビ映画。
人を選ぶジャンル映画に、莫大な資金と、並外れた熱量を注ぎ込み、実際に大ヒットを記録。
観客を軽視せずに、膨大な手間と時間、的確なビジョンを持った映画が売れ、それがまた好循環をもたらす...
数年おきに超傑作が飛び出す韓国のエンターテイメント映画、本当羨ましいです。
しかも、
ゾンビ映画というジャンルを創りしジョージ・アンドリュー・ロメロが永眠した年に、こんなにも正当でフレッシュなゾンビ映画が出てくるとは...監督は、韓国アニメーション業界で活躍してきた若き才能、ヨン・サンホ。
今作が長編実写映画のデビューになります。
主演を務めるのは、『トガニ 幼き目の告発』や『サスペクト 哀しき容疑者』のユン・ユ。
『殺されたミンジュ』マ・ドンソクや、同じく『トガニ』のチョン・ユミ、人気子役のキム・スーアン等が共演、ドラマを奏でています。
ゾンビ映画といえば、人間ドラマを度外視したB級映画...?
本当に、誰がそんな事を決めたのか。いや、私もこの映画を見るまでは、少なからずそう思うところがありました。
ごめんなさい。
もう、そんな感情は一切ありません。
私のように先入観がある人にほど、この韓国発のゾンビ映画を見て欲しい!
今作の舞台は韓国版新幹線である、高速鉄道KTX。
そこに乗り込んだのは、別居中の妻の元へ向かうソグと娘スアン。
彼ら以外にも野球部一同や老姉妹、身籠った夫婦などが、KTXに乗り込む
それぞれの「日常」が描写されます。
そんな何でもない
「日常」の中の違和感、特に電車が発つ瞬間にスアンの目に一瞬、ほんと一瞬だけ飛び込んでくる光景が、この後の期待と不安を強烈に煽って来ます。そして急激に発生する、KTXの動く密室空間の中でのパンデミック。。。
自体を飲み込めぬまま襲われる乗客。
次第に自体を理解し唯一の逃げ場「後方」に逃げる乗客。
前で起こった事を理解できぬまま襲われる乗客、更にそしてそれを見て逃げ惑う乗客。
繰り返されるループですが、
逃げる先には限りがある訳で...そんな素晴らしい幕開けを飾るゾンビの襲撃は、最後まで衰えません。
新幹線のごとく、次から次へと襲ってるゾンビ描写の素晴らしさ。
僅かな希望と圧倒的な絶望の相乗効果で、乗客を、そして観客を徹底的に追い込みます。笑ってしまう描写と、絶望感を煽る描写のバランスも素晴らしく、楽しいし怖い...なんだよこれ最高かよ!
これまでの
ゾンビにない強み「走る!」と弱点(内緒!)を活かしたストーリーテリング、ゾンビ映画の自由さを活かした脚本の素晴らしさを痛感します。
そしてこの映画が、近年のゾンビ映画で飛び抜けて凄いのが、
楽しすぎるゾンビ映画と、重厚な人間ドラマを両立してしまった事。
ゾンビのパンデミックというのは極めて非現実的な現象ですが、
実は同時にこれ程「人間を自由に追い詰められる」手段は他にありません。実はこれこそが、ゾンビ映画の原型を作った故ロメロ監督の真骨頂。
単に低予算で緊迫感を出せるだけでなく、実社会での暗喩(今作はもろに朝鮮戦争)や皮肉、人間の本質を映し出すのに非常に適したジャンルでもあります。
日本で言うゴジラの立ち位置なのかもしれません。
今作も、人間の醜さが晒され、
怖いのはゾンビなのか人間なのか、その境界線が曖昧にぬります。極限状態で描かれる主要人物のキャラクターも最高です。
そもそもそんな状態になる前から、というのりなる前だからこそ、際立っている主人公ソグのダメ人間っぷりに好感大。
競争社会での勝ち組故のダメさ、特に何がダメなのか全く気付いてない様子が、地味ながら中々イライラします。
微妙な距離感の野球部男女や、「やめて...いや、でかした!!」なおばあちゃん、超が100個つくクソ野郎なおっさん、最も守りたくなる妊婦なども最高なのですが...
やっぱりマ・ドンソク演じる妊婦の夫の巨漢兄ちゃんサンファでしょ!
全人類が彼に惚れるはず。
とにかく、
ゾンビ描写の中でキャラクターを立てられていった彼らが、ラストに向けて織り成すドラマに涙が止まりません!!更に極めつけは、どう終わらせるかと思っていた中でのあのラスト。
人とゾンビを隔てる物を◯◯で表現するとは...
確かに!!という共感と共に、線路のように続くこの先の人生を思い涙がまた...
ゾンビ映画なのに泣いた...
いや、ゾンビ映画だからこそ泣いた!斬新かつ痛烈な展開で、それらが容赦なく人間を追い込みドラマを作り出す。
大傑作です!!!
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- 2017/09/21(木) 00:05:03|
- 2017年公開映画
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ジャッキー・チェン主演の最新作!
『スキップ・トレース』
~あらすじ~相棒を殺した犯罪王ヴィクター・ウォンを9年間追い続けるベテラン刑事ベニー・チャン(ジャッキー・チェン)は、犯罪に巻き込まれた亡き相棒の娘サマンサ(ファン・ビンビン)を救うため、事件の鍵を握るアメリカ人詐欺師コナー・ワッツ(ジョニー・ノックスヴィル)を追ってロシアへ向かう。マフィアに捕らえられていたコナーを無事に確保するベニーだったが、なぜか彼と一緒に追われる身となってしまい……。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆(65/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) 引退なんてしないしない。
我らが大スター、ジャッキー・チェン主演最新作!
「アジアのロバート・デ・ニーロになりたい。」
なんて言って本格アクションからの引退宣言をした『ライジング・ドラゴン』から3年。
『ポリス・ストーリー レジェンド』や『ドラゴン・ブレイド』等シリアストーンの無茶は抑えめのアクションを経て迎えた今作。
御歳61歳(撮影同時)にして、
サービス精神全開なジャッキーアクション復活でございます。
演技派としての幅を広げつつも、『ラッシュアワー4』と『ベスト・キッド2』等の企画にも意欲的との事。
ありがとう、ジャッキー。
ジャッキー・チェンをリアルタイムで見られる事に、感謝感謝。今作の監督にはもっか中華圏へ出稼ぎ中、『ダイハード2』や『ディープ・ブルー』『クリフハンガー』のレニー・ハーリン。
細かなプロットの積み重ねより、とにかくやりたい事をやっちゃう潔い良い映画監督です。
そしてジャッキーの相方、アメリカ人詐欺師を演じるのは『ジャッカル』シリーズのジョニー・ノックスヴィル。
ばりばりコメディ畑出身の俳優さんですね。
今作はジャッキー演じる拗らせ刑事と、ジョニー演じる調子の良い詐欺師の、バディロードムービーになっています!
ジャッキーのバディムービーといえば、『ラッシュアワー』シリーズや、『シャンハイ・ヌーン』、一人二役の『ダブル・ミッション』や『ツイン・ドラゴン』なんかがありますが、今作はそこに『WHO AM I』的なロードムービーを足し合わせ、
非常にライトな
ザ・娯楽作品、これぞジャッキー作品な仕上がりになっています。
まず冒頭のコミック感満載のキャラクター紹介。
ジャッキー映画としては今まで見ないアメリカナイズな演出から始まります。
ぶっちゃけここだけを見ると今更感が満載で、ダサいっちゃダサいのですが、そこにジャッキー・チェンがいると安心するこの感じ。
そして、その後の川辺てのアクションが、往年のジャッキー映画そのもので、心底ありがとう!
アメリカナイズされたジャッキー映画っていうのが心を揺さぶってくる訳です。
中国、ロシア、モンゴル...
そんな世界各国でアクションを展開していくジャッキー。
場所場所の特徴を用いたカンフーアクションが既視感はあるものの、作品の閉じられた時間の中ではどれも新鮮で、ジャッキーに求めてる物でもある。
やっぱりレニー・ハーリン監督は、ジャッキーでもチェンが大好きなんだなと感じました。
そんなジャッキーと対照的なキャラクターでありながら、次第に相棒になっていくのが、お調子者詐欺師のコナー。
彼のキャラクター紹介の一連の流れは、
しっかりカッコよく、そしてしっかり間抜けでもあり最高でした。
またバディ物というだけでなく、二人の関係性の置き方自体も『ラッシュ・アワー』のそれで、監督が猛烈に意識している事も伝わってきます。
上述の通り、往年のジャッキーアクション、そこに組み込まれる一見アンバランスなアメリカナイズされた作り含め、ジャッキー映画だなーという楽しさは終始続きます。
しかし、それ以上でもそれ以下でもないというのが、この映画の欠点なのかもしれません。
面白味のない物語、ツッコミ所満載の展開、ちぐはぐな演出により、感情が盛り上がりきらず、そこまで乗り切れませんでした。
それでも、2017年にまだリアルタイムでジャッキー映画を見られる幸せに勝るものなし。
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- 2017/09/17(日) 17:10:27|
- 2017年公開映画
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女神の降臨!DCの逆襲!
DCエクステンデッド・ユニバース3作目
『ワンダーウーマン』
~あらすじ~人間社会から孤立した女性のみの一族のプリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロットと遭遇。彼を救出したことをきっかけに、ワンダーウーマンは身分を隠して人間社会で生活していくことにする。(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(80/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) アメコミ界の両巨頭。
マーベルコミックスと、DCコミックス。
コミック、映像化と凌ぎを削っていた両者ですが、近年はマーベルコミックスの連続シリーズ化、ユニバース化による大成功で、アメコミ映画=マーベルと言っても良い程マーベルが圧倒。
しかしそれ以前のアメコミ映画の筆頭はDCコミックスであったはず...
そんな状況の2013年にマーベルに遅れながら、DC側もユニバース化をスタートさせますが、旨味が皆無なスーパーマンの誕生譚『マン・オブ・スティール』、お話が崩壊していた『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』、溢れている旨味成分を全て台無しにした『スーサイド・スクワット』と、興行的にも批評的にも惨敗でした。
(個人的に最もがっかりしたのは『スーサイド・スクワット』ですが...)
特に本筋の一.二作目に関して触れると、重み表現等良い所があるにはあるのですが、
ヒーロー物としてはあまりに辛気臭すぎる上、そのストーリー自体も崩壊していた為、「もうDC作品は見なくてよいかな...」なんて思いにすらなっていました。
そんな中でも辛うじて興味を持続させてくれたのが、今作の主人公、ガル・ガドット演じるワンダーウーマンの存在です。
『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』終盤での
彼女の登場シーンは、作品中の鬱憤を全て弾き飛ばしてくれる程、活力に満ちた素晴らしくカッコ良いシーンになっていました。
そして発表された今作の監督が、
シャーリーズ・セロンが戦いすぎる女性(殺人鬼)を演じた『モンスター』のパティ・ジェイキンス。
ヒーロー映画としては初の女性監督であり、自身としても満を持して14年ぶりの監督作品になります。
本国公開から飛び込んでくる絶賛の嵐、興行的にも女性監督歴代NO1のヒットとあって、ついに来たかDC!とめちゃくちゃ楽しみにしていました!
これが見たかったんだよ、DCヒーローさん!「神話」的な描き方が特徴なDCユニバース。
シリアスでダーク、括弧つきでリアルな世界観は、今作の冒頭でも健在であり、それどころか直接的に「神話」に対するアプローチから始まります。
神が作りしアマゾン族伝説の島セミッシラ。
少女時代のワンダーウーマンが、女性しかいないこの閉鎖された環境の中で、いかにして成長していくか、更にいかにして戦士を志したかを非常に丁寧に描いていきます。
女性監督パティ・ジェイキンスだからこそ実現出来た
「女性だけの神の島」の独特な雰囲気は、どの映画でも見たことのない印象を与えてくれます。
またこの丁寧な誕生譚から始まるアプローチは、直近のマーベル作品と比較すると正反対で非常に面白さがあります。
確かに丁寧であるが、やはりDCにはこの「神話」的な描き方は避けられないのね...
そう感じていたのは、クリス・パイン演じる不時着したパイロットのスティーブ・トレバーとの出会いまで!
自らは神によって作られ、戦争を創りし軍神アレスを打倒するワンダーウーマン。
人間の弱さと間違いによって起こった戦争を、人間の責任として終わらせんとするトレバー達。「神話」と「現実」が引き合わせられる事で、それぞれが相対化し、ユーモア、そして皮肉として機能、これが作品の抜けを良くしていき、抜群に楽しい!誕生譚の丁寧さが、この楽しさを強調しているのは間違いし、独特の空気は崩さないようにオフビートなギャグを投入するバランス感覚も流石です。
そしてこの対比が、テーマとしてラストまで効いてきます。
「現実」の人間の戦いに対する受け取り方の変化、歩み寄り。それらが
ワンダーウーマンの内的な成長となり、彼女の戦士としての外的な成長、つまり能力の解放に繋がるのだから、めちゃくちゃ上がります。それだけでなく、
「神話」として存在する戦いも、「現実」として存在する戦いもどちらも本物で、それぞれがそれぞれの戦いでけりをつける。
どちら目線で見ても正しいラストに、これまでのDCユニバースを全て見直す勢いで感動しました。
もちろん、そんなストーリーの構造を置いておいても、アクション、つまりは彼女の戦闘スタイルが抜群にカッコ良い!
ようやく昼間の戦いを見せてくれただけでなく、
初めてのコスチューム披露から、「耐えて、耐えて、耐えて、攻撃する」そんな彼女のスタイルが凝縮された戦い方で、男共の先陣を切って突入する戦場シーンが、とにかく上がる!そこでかかるテーマソングも上がる!
ヒーロー映画史上屈指の名シーンと言って間違いなし。
上記スタイルが、女性が権利を勝ち取ってきた戦いと重なるのもまた良いですよね。
これまでのDCユニバースの中では駄目すぎて突っ込み気にすらならなかった所が、今作は文句をつけたくない映画の中だからこそ目立ってしまっている点もいくつかあります。
ストーリーの唐突さ、強引な展開がまだ目立つなと。
特に序盤の母親が受け入れるシーンと、終盤のワンダーウーマンのある変化には、釈然としない所が残りました。
しかし!
それでも間違いなく、旨味だらけの素晴らしい作品!
これからのDCユニバースがますます楽しみに。
オススメです!
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- 2017/09/06(水) 15:27:54|
- 2017年公開映画
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カー&ガンアクション×ミュージック=純度の高いラブストーリー
エドガーライト監督最新作!
『ベイビー・ドライバー』
~あらすじ~幼い時の事故の後遺症によって耳鳴りに悩まされながら、完璧なプレイリストをセットしたiPodで音楽を聴くことで驚異のドライビングテクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。その腕を買われて犯罪組織の逃がし屋として活躍するが、デボラ(リリー・ジェームズ)という女性と恋に落ちる。それを機に裏社会の仕事から手を引こうと考えるが、ベイビーを手放したくない組織のボス(ケヴィン・スペイシー)は、デボラを脅しの材料にして強盗に協力するように迫る。
(シネマトゥデイ)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆(95/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし) なんだよこれ、超絶面白いじゃねぇかよ名作ゾンビ映画を元にした『ショーン・オブ・ザ・デッド』、数多くの刑事アクション物を活用した『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』等の信頼できる映画監督、エドガー・ライト監督の最新作!
元々、自他共に認める映画オタクであったエドガー・ライト。
そんな彼を有名にしたのは、一足先に超売れっ子となった盟友サイモン・ペッグと組んだ、先述2作に『ワールズ・エンド』を含めた「コルネット3部作」(アイスクリームのコルネットが登場することから)。
監督と脚本を務めたこれらの作品で、
名作を独自のテンポで引用し、全く新しいコメディ映画に作り変える、エドガー・ライト節を完全に印象付けました。
とくに『ホット・ファズ』は最高だったな...
そんなエドガー・ライトが遂にハリウッド進出!
実は今作の前に、MCU『アントマン』を手がける予定だったみたいですが、マーベル側と意見が合わず降板。
エドガー・ライト版アントマンはマーベル史上最高の脚本だったという噂が聞こえてくる今となれば、やっぱりエドガー・ライト版も見たかった...
(もちろん引き継いだペイトン・リード版アントマンも最高でしたが!)
そんな大作降板の直後に、制作が発表されたのが今回の『ベイビー・ドライバー』。
主演には、『きっと、星のせいじゃない。』で脆くもキュートな難病を抱える少年を演じた、アンセル・エルゴートが抜擢されました。
この映画の何がそんなにクレイジーなのか...ベイビーフェイスなイケメン、アンセル・エルゴートが演じる通称BABY。
彼は、子供時代に両親を亡くす事故に襲われます。
その事故の後遺症により、彼は耳鳴りが止まなくなってしまうのですが、
唯一「音楽」だけがその耳鳴りから解放してくれるのです。
事故がきっかけで狂い始めた彼の人生は散々で、今は借金を返す為に強盗等の犯罪者専用ドライバー「逃がし屋」を請け負っています。
『ザ・ドライバー』や、『ドライヴ』など名作映画で登場する職業ですが、今作の「逃がし屋」は一味違います。
先述した
「音楽」が、天才的なドライブテクニックを発揮するスイッチとなります。
今作ではそれらベイビーが耳にする音楽が、劇中歌として全編BGMとなっています。
ここまでであれば、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『オデッセイ』を筆頭とする近年の流行りの延長線上なんですが...
今作がその一連のムーブメントからずば抜けているのは、
作中全てのカーアクションにガンアクション、些細な行動までもがベイビーの聴く音楽と一体化している点。
全ての行動がベイビーの聴く音楽のビートを刻んでるかのように流れていくのです。小手先の技でなく、
アイデア段階から落とし込む的確なビジョン、それを実現する為の細部まで徹底された演出、キレッキレに全体コーディネートされてるからこそ、驚くほどフレッシュな映画になっています!驚くべき事にエドガー・ライト監督、今作のアイデアは21歳であった1994年の段階から持っていたようで、Mint Royaleの“Blue Song”のミュージックビデオで見る事ができます。
また、『ショーン・オブ・ザ・デッド』の一部にも使われていますね。
そもそも、映画全体を通してリズムを刻むようなテンポアップ描写というのは、以前からエドガー・ライト監督らしさを感じる要素でもあったなと改めて思い出しました。
そんな素晴らしき音楽とアクションの融合。
この映画を大好きになった理由は、そこだけではありません。
まず一つが、キレッキレにコーディネートされた描写を手段に語られる、
非常に純度の高い愛の物語そのものです。
両親の死以来、現実感のないベイビーが生きる世界。
ベイビーにとってそんな無色な現実からの「逃避」に必要なのが、「音楽」による現実への色付け。
つまり、「音楽」は耳鳴り対策や天才ドライバーとしてのスイッチだけでなく、
どうしようもないこの世界での「逃避」手段として機能しており、
この映画が見せる
音楽でコーディネートされた世界は、ベイビー目線での逃避世界なのです。
そんな音楽を込めないと直視できない現実の中、
デボラとの出会いが無色な世界に、初めて色を付けてくれます。運命的な出会いと同時に始まる、避けられない逃避行への道。
特に前代未聞にロマンチックに仕上げたコインランドリーでのデートシーンは最高でした。
「逃避」という観点に着目してすると、見えてくる関係性もあります。
男性ホルモン全開ジョン・ハム演じるバディは、最愛の恋人ダーリンと登場から一貫してイチャつきっぱなしです。
しかし、彼は
唯一ベイビーの音楽に対して共感する犯罪者であり、唯一ベイビーが笑顔を見せる相手です。
それだけでなく途中人間的な弱さも垣間見せ、
その弱さが実はベイビーと同期しているという事が暗示させます。
だからこそ
バディを襲う悲劇、そして彼のとるある狂気の纏った行動に対して共感しっぱなしで...何なら途中泣いてしまいました。もちろんジェイミー・フォックス演じる'狂人'バッツや、ケヴィン・スペイシー演じる'いるだけで悪人'ドク等、それ以外のキャラクターも最高でした。
そして極めつけはラストに対する衝撃。
この手の映画の終わらせ方からは想像出来ないケジメの付け方、正しすぎる作品の終わらせ方に鳥肌が止まらず...
何だよエドガー・ライト!面白いだけでなく、正しいって、どれ程完璧なんだよ!他にもマイケル・マンを彷彿とさせる超重厚ガンアクションや、途轍もなく幅の広い音楽のチョイスなど、もっともっと褒めたい!
映画のネタ切れ?黙らんしゃい。
オリジナル作品でも、ここまで面白い作品が出来るんだぞ!と叫びたくなる大傑作。
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テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画
- 2017/09/04(月) 23:00:20|
- 2017年公開映画
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