『犬猿』

~あらすじ~
印刷会社で営業を担当している金山和成(窪田正孝)は、刑務所から出てきたばかりの乱暴者の兄・卓司(新井浩文)を恐れていた。一方、幾野由利亜(江上敬子)と、芸能活動をしているおバカな妹の真子(筧美和子)は、家業の印刷工場を切り盛りしていた。兄弟と姉妹の関係は、あるときから変化し始め……。
(シネマトゥデイ引用)
☆☆☆☆☆☆☆☆(85/100)
以下 レビュー(核心のネタバレなし)
日本の現役映画監督の中で、3本の指に入る大好きな監督、吉田恵輔監督の最新作!!
アイドル映画でありながら強烈な人間本来のエグみに満ちた『さんかく』、そのエグみをバイオレンスにも発散させた森田剛主演の『ヒメアノ~ル』。
この二作はその年のベストクラスに大好きで、それ以外の作品も基本安心して楽しませてくれます。
そんな吉田恵輔監督が今回扱うのは「兄弟」。
何をえぐりとるのか...それをどう調理するのか...
何を隠そう、兄弟、それも双子の自分としては、嬉しくてたまりません。
二組の兄弟を演じるのが窪田正孝&新井浩文とニッチェ江上敬子&筧江美子。
比較的ポップな俳優の活かし方も抜群に上手い吉田監督により、どんな存在感を見せるのか興味津々です!
兎に角面白い!!
登場する二組の兄弟姉妹。
地道に生きてきた和成と、その兄で刑務所上がりの卓司。
生真面目に町工場を切り盛りする由利亜と、ふわふわと芸能活動をしている妹の真子。
あくまでカッコ付きですが...
(正反対な)二組の兄弟が、交わることで、これまでの生活に歪みが生まれて、この映画を劇的に動かします。
そもそも兄弟というのは、他に類を持たない不思議な関係性です。
同じ血が流れ、同じ環境で育ち、最も近くにいる同世代。
他の誰にも抱けない信頼や愛情を感じる、変えの効かない存在ですが、
それと同時に容易に比較できるが故、利用して卑屈になる事も、自己肯定を得る事も出来る。
凄いねの一言も中々言い出せないし言いたくない、粗を見つけては皮肉を言ったり逆に優しさで自分を誇示したりもする。
兄弟だからこそ、価値を認めなくないし、虐げてしまう事があるんだよな...
双子を持つ自分にとっては、そんな兄弟ならではの感覚を、エグく切り抜いてくるこの映画は、これ以上ない「俺の映画」なんです!!!
そして真骨頂は、この人間の嫌な所をつまみ出しながら、それらを幹に紡ぐ物語の面白さ。
兄弟こそのプライドや見栄、卑屈や蔑みが、「どうなるんだ...!?」と物語を予期せぬ方向へ転がしていきます。
えぐり取られた人間の嫌な行動や顛末は、どれも苦く痛いはずなんですが、同時にエンターテイメントとしてめちゃくちゃ楽しめるバランスにもなっています。
これはテンション(キレ)や物語を横滑りさせる道理こそ違えど、直近に見た『スリー・ビルボード』に近い感覚がありました。
チャップリン曰く「喜劇と悲劇は紙一重」。
今作も、目を背けたい人間の嫌な本性が同時に面白さに直結する、そんな傑作「エグみエンターテイメント」なんです!
更にラストでは、大いに大いに唸ります。
屋上での温かい会話に、涙腺を緩め
あぁ良い映画だった...
そんな感傷に浸る大円団...かと思いきや!
吉田監督十八番の、意地悪で切れ味抜群な切り返しに、やってくれたな!と共に、でもそうなんだよ!!!と大絶叫。
ほんと吉田監督性格悪いわ~(褒めてます。)
もちろんキャストもみんな良い、最高。
新井浩文の周囲を問答無用で巻き込む存在感、筧美和子の万といそうな女優の拗らせ感も、ニッチェ江上のコントの延長線上なんだけど実在感ある人物に落とし込んだのも最高最高。
そして何より窪田正孝!!個人的には彼が一番怖い。
一見実体感のない彼の奥にたまに見える表情が印象的で、「いや...やっぱ兄弟だよ...」としっかり感じさせてくれるのです。
本当、吉田恵輔監督から目が離せない。
傑作エグみエンターテイメントを劇場で!
超オススメです!!
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