
~あらすじ~
スパイダーマンの正体がピーター・パーカー(トム・ホランド)だという記憶を世界から消すため、ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)はある呪文を唱えるが、それがドック・オク(アルフレッド・モリナ)らヴィランたちを呼び寄せてしまう。ヴィランの攻撃によって、ピーターのみならず恋人のMJ(ゼンデイヤ)らピーターの大切な人たちにも危険が及ぶ。(シネマトゥデイ引用)
8/10★★★★★☆☆☆
以下 レビュー(ネタバレなしです!!)
【作品背景】
『アベンジャーズ』シリーズなどマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の27作目になる本作。
MCUの中で、トム・ホランド演じるスパイダーマンがメインとなる作品、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)に次ぐ、いわゆる「ホーム」シリーズの3作目で、その「ホーム」シリーズとしては区切りとなるのが本作と言われています。
また、過去にスパイダーマンの映画シリーズはその「ホーム」シリーズ以外で、2002年から始まったサム・ライミ監督×トビー・マグワイア主演の三作品、2012年から始まったマーク・ウェブ監督×アンドリュー・ガーフィールド主演の2シリーズあります。
そんな中で本作は、トム・ホランド版の三作目でありながら、マルチバース...いわゆるパラレルワールドの導入により、過去の2シリーズに出てきたヴィランが、同一俳優、同一キャラクターのまま、登場しトム・ホランドのスパイダーマンと対峙する事が予告編から判明し、めちゃくちゃ話題になっていました。
つまり過去の2つのシリーズと何かしら繋がりのある作品になりつつも、トム・ホランド版「ホーム」シリーズの締めくくりであり、MCUの世界観に「マルチバース=多元宇宙、多元時間軸」という大きな流れが入ってくるターニングポイントになる、非常に着目点の多い作品になっています。
ここからの感想は、
前半は「完全にネタバレなし」
後半は「意図的に隠されてるネタバレは避けつつ、物語展開だけ少し触れる」
形で話していきます。
【感想(ネタバレなし)】
まずは感想を、ネタバレに触れる事なく話していきます。
一言で感想を言うと...
展開の強引さはめちゃくちゃ感じつつも、それ以上のお祭り的魅力と、作品自体の「心意気」の魅力が、大きく上回り、「この映画に立ち会えて良かった」と感じる奇跡の作品になっていました。
過去にもシリーズ作品として仕切り直し、リブートされ、複数存在するシリーズはたくさんあります。
ただ殆どの作品は、シリーズ間で余りに時間が経ち過ぎていて、過去シリーズをそのまま活かす事は現実的ではない中、スパイダーマンシリーズは20年の間に3つのシリーズがあって、それがMCUのマルチバースの流れとも合致するからこそなし得た企画で、過去作のヴィランと過去作の流れをそのまま「今」向かい合う映画になっていて、その「お祭り」にリアルタイムで立ち会えた事による高揚が終始ある映画になっています。
ただヴィランを出すだけではなくて、そのヴィランとの向かい合い方、心意気の部分が凄く良いんでくが、それは後半に触れたいと思います。
さらに本作は過去シリーズを拾うだけではなくて、MCU版スパイダーマンとして、「ホーム」三部作の終着点として、ピーター・パーカーに訪れる展開も、めちゃくちゃ重たいんですけど、三部作としての意味を成してて好きでした。
つまり、これまでの「ホーム」シリーズは過去シリーズと違って学園物がベースにある中でのヒーローという事で、一作目では青春の一部としてのヒーロー活動、二作目では青春とヒーローの折り合いを描いており、「子供である」事をベースに描かれていたんですが、本作は「真のヒーロー」もっと言うと真の「親愛なる隣人」となる集大成的展開になっていて、それがめちゃくちゃ重いし、俺たちの知ってる「スパイダーマン」になったと感じられる作品なっていきます。
そんな風に、過去作のヴィランをリアルタイムに繋げるお祭り的展開と、「ホーム」三部作としての集大成的展開を、同一ストーリー上に成り立たせた、奇跡の一作になっていました。
【感想(核心以外のネタバレ含む)】
ここからは、核心以外の展開にだけ触れて、感想を話していきます。
まず本作のヴィランとの向き合い方、「心意気」の部分が凄く良かったです。
振り返ってみると過去のスパイダーマンのヴィランは、根っからの悪人ではなく、皆悲しい展開故にヴィランになっちゃってるんですが、本作はそんなヴィランと、過去シリーズ同様に戦うのではなく、どうやって「救う」かという話になっていきます。
そんな救えなかったヴィランを救う展開は、ヴィラン自体への優しい視点も感じつつ、彼らを救えなかった過去シリーズのスパイダーマンまでも救おうとする、めちゃくちゃ優しい視点を感じる事が出来ます。
一方で、本作スパイダーマンにとっても、その「救う」展開は大きな意味を持っていきます。
『大いなる力には、大いなる責任が伴う』という言葉が、本来は自分の責任外の所に感しても、力を持った者の責任として、身を挺しても背負っていかないといけないというのが、別世界のヴィランへの向き合い方を通して成長として描かれ、最終的には「親愛なる隣人」としての大いなる覚悟として繋がっていくのが、うまいなと思いました。
ただ、そういった「意気込み」をしっかり感じられる一方で、ストーリー展開の部分でどうしてもノイズになってしまった所が何箇所かありました。
きっかけとなる大きな問題がいつの間にかストーリーから消えるのはモヤモヤが残りますし、一部ヴィランのストーリー上都合の良い立場に流される感じはノイズになりました。
ラストの展開もロジック的に腑に落ちない所もあったり、かなり強引に物語を進めてるのは、否定できないのかなと思います。
ただ、お祭り要素が遥かに凌駕して、テンションを上げてくれるので、「ありがとうございます!」の一言に尽きる、そんな映画になってるのかなと思います。
オススメです!!
出来れば、過去のスパイダーマンのストーリー、特にヴィランの顛末を要約レベルでも良いので振り返ってから、見る事をおすすめします。

