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劇場公開映画を中心にレビュー 映画の良さと個人的感想を。

○70 『グローリー 明日への行進』犠牲の物語

でも...でも...死には慣れない。

マーティン・ルーサー・キングJr.牧師の初映画化。
『グローリー 明日への行進』



~あらすじ~
1965年3月7日、アラバマ州セルマ。前年にノーベル平和賞を受賞したマーティン・ルーサー・キングJr.牧師の呼びかけに応じて、黒人の選挙権を求める525人が、行進を始めた。
非暴力を貫きデモ行進を始めるが、白人知事が率いる警察の鎮圧にあい、暴力を持って妨げられてしまう。この事件は“血の日曜日事件”として全米のニュースに取り上げられ、人種をまたぎ、全国の同士たちの心に火をつける事になる...




⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(70/100)

以下、レビュー(確信のネタバレなし。この手の映画はあまり気にしない。)

~selmaの行進~
舞台は20世紀の中頃。アメリカで、公民権運動が全盛であった時代。
話のスタートとしては、ノーベル平和賞を受賞し、すでにキング牧師が指導者として世間から一目置かれる立場にある所から始まる。
今作は決してキング牧師の半生を描いた訳でない。一つの史実を切り取っただけだが、その一つの史実の裏側を描く事で、キング博士の葛藤や、家族の想い、当時の歴史的背景や、黒人達の差別への想いを映し出している。

冒頭、そんな彼が表彰される映像と同時に、アメリカ南部で、ジム・クロウ法という州ごとの人種差別法の元、普通の生活の中で普通に理不尽な目にあう黒人達を映し出す。

選挙者権利を得ようとするが理不尽な理由で認められなかったり、唐突に子供達の命が映し出されたり...

なによりもまず、つい5.60年前までこのような差別が当然のように日常にあって(もちろん今も全てが解決なんて到底していないが)、一人の強い人物が、黒人たちが、そして世の中が少しずつ立ち上がっていったという事実。
あの南北戦争、奴隷解放宣言から、100年程月日が流れているのにも関わらず。


~指導者同士の関係性~
キング牧師は、度々、当時のアメリカ大統領であるジョンソン大統領に訴えかける。
「我々に選挙権を保証して欲しい。確かに憲法上は保証されているが、様々な現場の理不尽な行為により、現実は南部の殆どの黒人が選挙権を持たない。黒人がいくら殺されようが、そんな環境で選ばれた議員や保護された警察官や、裁判官にやって、白人は例外なく無罪になっていくのが現実だ!!」

大統領は一定の理解を示しつつも、「今ではない。我々には他にやるべき事がある。」と強調する。
それは、貧困対策であったり、ベトナム戦争であったりするのだが、一向に動かない...

アメリカでは、この関係性の描き方が賛否両論を呼んでいる模様。
そもそもジョンソン大統領は、リベラル派であり、キング牧師とも協議を重ねて、保守議員の反発に対しても粘り強く交渉し、積極的に公民権の確立を進めた人物であると世間的には評価されている大統領。
どちらのイメージが正しいかなんてわからないが、
個人的には、ジョンソン大統領のイメージを持っていない自分でも、少し作り手の悪意があるなって感じた...

またもう一人の黒人指導者、マルコムXも作中に登場する。
暴力による解決を進めていたマルコムXは、晩年少しずつ方針転換を試み、対立していたキング博士とも接触を試みる。
我々は方針で対立してきた。しかし敵は同じだ。
しかし、現実はあまりにも...


~非暴力の誓い~
キング牧師の運動の特徴として、絶対に暴力に頼らないという所にある。
暴力は暴力を呼ぶ。暴力では何も変えられない。

これは今作の行進でも絶対に貫く。そして、それが少しずつ奇跡を起こす。

こんなにも勇気のある、訴えはあるだろうか?
映画ではそこまでは描かないが、キング牧師の行く末を思うと涙が止まらない。


~先人の存在~
この映画にも、黒人達が理不尽に扱われるシーンや、白人が持つ偏見をあらわにするシーンがいくつか登場する。
しかし、数々の映画がかたるように、差別はこの当時だけでない。それどころか、年を遡るほど、理不尽さが増していく。

彼らは自分達の役割を受け入れ、僅かな事に幸せを感じながら、生きてきた。
この先人の努力は、想像を絶する物がある。いや、想像すらも出来ない。

キング牧師が言う。
「この先人が耐えてきた物を想像するだけで、我々が前へと行進する動力になる。」



~犠牲の物語~
この映画には数々の選択が出てくる。そしてそのどちらの選択を選んでも犠牲が出る。

行進をすると、警察の差別的な抵抗にあい、死人が出るかもしれない。
しかし、行進をしないと、何も変えられない。理不尽な犠牲に合い続けるだろう。

キング牧師は、この葛藤に悩み続ける。案の定、行動によって多くの犠牲が出る。
しかし、過去の先人が、世論が彼を導く。


~家族の物語~
今作は何よりも家族との間での葛藤の物語と感じた。

活動を続ける限り、家族は常に死の恐怖と戦わないといけない。しかし、現状耐えるだけでも、常に死の恐怖がある。ここにも犠牲の物語。

妻が言う、
どんな事にも慣れてきた。でも死だけはなれない....常に目の前に靄がかかっている...
というセリフが頭から離れない。

牧師が、この活動をしさえしなければ、こんな死の恐怖に怯えずにすむ。
家族の犠牲があってこそのキング牧師の活動なのだ。


~主題歌~
結末には触れないが、ラストに流れる

ジョン・レジェンドとコモンによる、アカデミー歌曲賞を獲得した主題歌 "Glory" が格別に素晴らしい。
素晴らしい映画を見た後の余韻が心地よく残る。

このシーンを、是非劇場で堪能して下さい!


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  1. 2015/06/21(日) 01:44:48|
  2. 2015年公開映画
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