
~あらすじ~
1973年、ハリウッド近郊のサンフェルナンド・バレー。子役として活動する高校生のゲイリー・バレンタイン(クーパー・ホフマン)は、ある日学校にやって来た写真技師アシスタントのアラナ・ケイン(アラナ・ハイム)に一目ぼれする。「運命の出会いだ」と告白してくるゲイリーを、年上のアラナは相手にせず受け流す。その後、食事をするなど共に過ごすうちに二人は距離を縮めるが、ふとしたことですれ違ったり、歩み寄ったりを繰り返していく。
(シネマトゥデイ引用)
8/10★★★★★☆☆☆☆
以下 レビュー(ネタバレなしです!!)
【作品背景】
『ブギーナイツ』、『マグノリア』、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『ザ・マスター』などのポール・トーマス・アンダーソン監督による最新作。
若くして世界三大映画祭全てで監督賞を受賞した巨匠の最新作で、いわゆるボーイ・ミーツ・ガールの青春映画になります。
本作の監督、ポール・トーマス・アンダーソン監督は、作家性も強くて、非常にファンが多い監督でもあります。
個人的に捉える彼の作品の特徴ですが、一つはキャラクターの写し方にあるのかなと思っています。
人間の未熟さやそれを隠すが故の空虚さや嘘っぽさを、付かず離れずの距離感で見守る撮り方をする事によって、悲劇と喜劇の絶妙なバランスで人を生々しく映し出す事が非常に優れていて、そんな登場人物が作る物語として、映画の魅力を引き立たせます。
また、行き当たりばったり的なキャラクターの行動を起点にしたストーリテイリングにも特徴をもち、ストーリーの向かう先が分からない、のらりくらり進んでいく所も特徴の一つなのかなと思います。
後は、長回しを活用した独特のカメラワークや、70年代や80年代の時代性やカルチャーをビビットに捉りこむセンス含めて、ポール・トーマス・アンダーソン節と言えるのかなと思います。
そんなポール・トーマス・アンダーソン監督は、彼の作品によく出演するお馴染みの俳優を起用する事が多いのですが、本作はそういった演者は豪華に脇を固めて、アラナ・ハイムとクーパー・ホフマンのフレッシュな俳優がダブル主演で青春劇を演じます。
特にクーパー・ホフマンは、監督の作品によく出ていて46歳の若さで亡くなったオスカー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンさんの息子という事で、かなり注目されています。
【感想(ネタバレなし)】
ポール・トーマス・アンダーソン監督の、そういったのらりくらりとした作風が、個人的にはあまりアジャストしてこなかったんですが、本作はかなり好きな映画でした。
というのも、ボーイ・ミーツ・ガール物という事で、のらりくらりの中でも向かっていく方向というのは明確で、彼の過去作の中でもかなり見やすい作品になってるとは思います。
とはいえ、だだのティーンエイジャーすれ違い恋愛物と思うなかれ。
本作は、25歳アラナと15歳ゲイリーの約10歳の歳の差の恋愛で、2人ともかなりクセあり、訳ありなんですよ。
特に25歳のアラナは、自意識が非常に強く、中身が伴わないのに外見的要素に惹かれて影響を受けて勘違いして、結果うまくいかなければ周囲に当たるという、子供っぽさ、未熟さを非常に感じさせる女性です。
逆に15歳のゲイリーは、イケイケなビジネススキル、もっというと実行するスキルは天才的で、年齢不相応な要素をもっています。
ただ、そこにある思慮深さや、想像力なんかは、年齢相応で、そのギャップが問題を起こしたりなんかもします。
そんな2人の年齢不相応な部分や、年齢相当の部分、この両面により、ありあない歳の差の恋愛を成り立たせたり、逆に遠ざけたり、右往左往する恋愛関係を絶妙に成り立たせてて、面白いなと思いました。
そんな2人、あるいは何方かの感情に寄り添うように撮られる訳ではなく、少し引いて傍観者のような立場から見守る視点で撮られています。
だからこそ、すれ違いを生む行動の一つ一つの未成熟さが際立ち、生々しくて痛々しい、それでいて可愛らしい...こんな恋愛、めんどくさい...けも何処か懐かしいなと思わせてくれる映画になっていました。
本作も70年代の街並みやファッション、音楽、映画を含めたカルチャー、ゲイリーのビジネスに使うキーアイテムのチョイスなど、時代の雰囲気を捉えるセンスは、流石だなと感じました。
そのあたり、タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と地繋ぎ感はすごく感じました。
また本作の出演者、豪華な俳優陣など総じて良かったんですが、中でも初長編映画で主演のアラナ・ハイムさんの、実在感はめちゃくちゃ良かったです。
ポール・トーマス・アンダーソン節を浴びながら、見やすい映画になっていて、入門作品として最適な作品なんじゃないかと思います。
おススメです!!

